東京・墨田区にあったセイコーミュージアムが、セイコーの発祥の地である東京・銀座へ移転。2020年8月19日(水)にオープンしました。
立地は銀座のランドマークとして知られる和光本館からも近い、銀座4丁目です。並木通り沿いのセイコー並木通りビルのB1から5Fまでが、セイコーミュージアムになりました。
中に入る前に、まずエントランスの左右壁面に注目してください。時計の部品の形を使って並木のグラフィックが表現されていますが、良く見ると計5カ所に、他と違うモチーフが隠されています。5つとも全てセイコーに関連するモチーフとの事、ぜひ探してみてください。
左は大型振り子時計「RONDEAU LA TOUR (ロンド・ラ・トゥール)」
ミュージアムはフロアごとにテーマが設定されています。1Fは「はじまりの時間」、インフォメーションカウンターのほか、懐かしい置時計も展示されています。ミュージアムショップでは、セイコーミュージアムのコレクションをモチーフにしたオリジナルグッズが販売されています。
1F「はじまりの時間」
階段で上がると、2Fは「常に時代の一歩先を行く」。セイコーの創業者、服部金太郎の歩みを紹介しています。
服部金太郎は1860年、幕末の江戸、現在の銀座5丁目付近で生まれました。近代化の波を受けた日本でいち早く時計に目をつけ、輸入時計を販売する服部時計店を開業。後に時計製造も手掛けるようになり、世界的な時計メーカーへと成長していきました。
目を引く展示が、焼けた懐中時計です。順調に成長を続けていた服部時計店ですが、関東大震災で工場が全焼。創業以来の非常事態に見舞われました。修理のために顧客から1500個余の時計を預かっていましたが、金太郎は同程度の新品で返済。顧客に迷惑をかけない姿勢は、大きな話題となりました。
2F「常に時代の一歩先を行く」 関東大震災で焼けた懐中時計(中央手前)
他のフロアへは、エレベータで移動。3F「自然が伝える時間から人がつくる時間」では、時計の進化の歴史が紹介されています。
日時計や水時計など自然の力を利用した時計から、機械式の時計へ。季節によって時間の長さが異なる「不定時法」を採用していた江戸時代の日本では、独自の機械式時計が発展しました。
「二挺天符目覚付袴腰櫓時計」は、昼用と夜用が自動で切り替わる時計です。速度調整に必要な分銅の移動を、大幅に減らす事ができる、画期的なシステムでした。
3F「自然が伝える時間から人がつくる時間」 右が「二挺天符目覚付袴腰櫓時計」
4Fは「精巧な時間」。1892年、精工舎が設立され、掛時計の製造を開始。目覚置時計、大衆向けの懐中時計、そして国産初の腕時計と、小型化が進みました。
大戦の後にさらに技術開発は進み、1964年の東京オリンピックでは公式計時を担当。イメージも飛躍的に向上しました。
そして1969年には、世界初のクオーツ腕時計「セイコークオーツアストロン35SQ」が発売。クオーツの仕組みは、セイコー方式が世界標準となりました。
4F「精巧な時間」
5Fは「いろいろな時間」。電池交換をしなくても止まらない時計、電波修正によりどこでも正確な時計、音や動きを楽しむ時計、ファッション性を楽しむ時計など、セイコーが送り出してきた多様な時計が並びます。
フロアの奥には芸術性が高い時計も。「悠久」は、中国・北宋時代の「水運儀象台」の駆動原理をもとにした高級置時計です。
5F「いろいろな時間」
B1は「極限の時間」。極めて正確な時間の計測が求められるスポーツ競技の世界。セイコーは1960年代からストップウオッチを開発しました。
黄色の大きな板は、競泳用のタッチプレート。泳者のタッチだけを確実に検出、現在も主要な競技大会で使われています。奥にある和光時計塔の文字板のレプリカは、絶好のフォトスポットです。
B1「極限の時間」
入口右側に設置されている大型振り子時計「RONDEAU LA TOUR (ロンド・ラ・トゥール)」は、30分にカリオン、毎正時にはパイプオルガンの音色が流れるからくり時計。人形達が歯車を回し、レインボーカラーの光が流れます。
入館は無料ですが、事前予約制。1日を3つの時間枠に区切り、その時間枠内で見学できます。訪問前にインターネット予約をどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年8月27日 ]