主に外貨獲得を目的にしていたという事もあり、それまでの美術史ではあまり注目される事がなかった明治工芸。前回展で紹介された驚くほど細やかな工芸品の数々は、美術ファンの注目を浴びました。
3年ぶりに開催される本展では、現代美術の超絶技巧も展示。明治の工人と同様に、超人的な技術で作品を生み出している現代の作家が紹介されます。
前室から展示室1では、さっそく明治工芸と現代作品が競演。ともに一木造りの‘釣瓶+蛙’と‘皿+魚の骨’など、比べて鑑賞できるのがポイントです。
前室~展示室1広い大きな展示室4では、明治工芸のみを展示。七宝の並河靖之は、今年、
大規模な展覧会が開催されましたが、ここでは濤川惣助も展示されています。「ふたりのナミカワ」は、ともに帝室技芸員でライバルでした。
柴田是真も帝室技芸員ですが、高い技術を用いたユニークな作風が持ち味。刀で刻んだ木目、蒔絵で描いた年輪と、変幻自在です。
独立ケースでは、前回展でも注目を集めた安藤緑山による牙彫。色合いも含めて本物そっくりです(補足ですが、安藤緑山の全盛期は明治ではなく大正~昭和初期です)。
展示室4展示室5では、自在に注目。金属製のパーツをつなぎ合わせ、可動式の動物や昆虫などを作った自在。明珍派の甲冑師によって始められました。
明治工芸以来の技法を受け継いだ《自在十二種昆虫》は、明治工芸では動かなかった部分も可動式に。《自在蛇骨格》は0.1ミリ単位で背骨の大きさを調整して、なめらかに動きます。ともに満田晴穂さんの作品です。
展示室5最後の展示室7には、現代作家の作品がずらり。明治工芸でも見られる七宝や木彫などに加え、アルミニウム鋳造による花、大理石から彫り出したドラゴン、ガラスで象った水入りのビニール袋と、現代的な素材を用いた作品も並びます。
明治工芸の時代からざっと100年離れていますが、同じ会場で展示されていても意外なほどしっくりきます。先人の思想が脈々と息づいているさまは、嬉しく思えました。
展示室7少し先になりますが、本展も全国巡回。東京展の後は、岐阜県現代陶芸美術館(2018年6月30日~8月26日)、山口県立美術館(2018年9月7日~10月21日)と進みます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年9月20日 ] | | 東京美術館案内
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