2008年からはじまり、09年、10年、11年、13年と過去5回にわたって開催されてきた「アーティスト・ファイル」展。
国立新美術館の広い展示室を使い、個展の集合体という形で現代美術の最前線を提示してきました。今回は韓国国立現代美術館との共同企画、作家も日韓が6人ずつという構成になりました。
出展12作家の中で一番印象に残ったのが、会場入ってすぐのヤン・ジョンウク(1982-)の作品。木の棒や糸、布などで組み上げられた大型の構造物で、一部がモーターで動いています。その作品は、まず感情や想いを短い詩や文章にし、そのテキストに対応する動く構造物をつくる、という制作プロセス。プリミティブなつくりで、動きにともなう音も印象に残ります。
ヤン・ジョンウク(1982-)の作品会場の照明を受けて清々しく輝く緑色のガラス作品は、イ・ソンミ(1977-)によるもの。実は作品の素材は、事故によって割れて道に散らばったガラス片や、透明で可変性のある捨てられたものなどが使われています。不幸なストーリーを経た素材が丁寧な手作業で生まれ変わり、新しい命が吹き込まれたかのように輝きます。
イ・ソンミ(1977-)の作品段ボール製の巨大な家は、イ・ウォノ(1972-)の作品。ソウルや東京のホームレスから段ボールの家を購入して集め、大きな家を組み上げました。会場壁面にはホームレスとの売買契約書とともに、制作過程(ホームレスとの交渉風景)の映像も上映されています。
イ・ウォノ(1972-)の作品既成の織物を解きほぐした作品は、手塚愛子(1976-)によるもの。手塚は武蔵野美術大学では油画科に在籍していましたが、カンヴァスに刺繍を施す作品から発展し、織物を解体する造形へと歩を進めました。二次元と三次元の間を行き来するような手法で、さらなる発展も期待できそうです。
手塚愛子(1976-)の作品「隣の部屋」という展覧会の副題は、個展形式を引き継いでいる事に加え、地理的に近い両国を表しての事。本展も
国立新美術館での開催の後には、韓国国立現代美術館(果川館)に巡回します。日本の美術家が「隣の部屋」に住む人にどんな評価をされるのか、ちょっと楽しみです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年7月28日 ]■アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋 ─ 日本と韓国の作家たち に関するツイート