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    レポート
    没後100年 青木繁展
    アーティゾン美術館 | 東京都
    39年ぶりの大回顧展、東京に巡回
    ちょうど100年前の3月25日、福岡市の病院で28歳の青年画家が亡くなりました。彼の名は、青木繁。3尾のサメを運ぶ10人の裸体の男たちを力強いタッチで描いた「海の幸」は、近代日本美術史でもっとも有名な作品の一つですが、生前の青木繁は薄幸といえる人生を歩みました。
    展示室。右に有名な「海の幸」
    青木繁肖像写真
    《海の幸》1904年、石橋財団石橋美術館
    《女の顔》1904年、個人蔵(大阪市立美術館寄託)
    展示室
    《わだつみのいろこの宮》1907年、石橋財団石橋美術館
    《大穴牟知命》1905年、石橋財団石橋美術館
    こちらは常設展示室。ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」とシスレー「森へ行く女たち」
    青木繁は1882(明治15)年、福岡県久留米市生まれ。画家を志して上京し、1900年に東京美術学校(現東京藝術大学)に入学します。画壇へのデビューは、在学中の1903年。神話を取材した作品群を出品した白馬会第8回展で白馬賞を受賞し、注目を集めるようになります。

    傑作として名高い「海の幸」が生まれたのは、1904(明治37)年。東京美術学校を卒業した青木繁は友人らと現在の千葉県館山市を訪れ、1カ月半の滞在の間に、10人の裸体の男たちが海の恵みをいただくイメージを生み出します。「海の幸」は同年秋の白馬会第9回展に出品され、高い評価を得ました。このとき、青木は22歳。自らの洋々たる前途を思い描いたでしょうが、残念ながら若き天才画家のピークは、この年になってしまうのです。

    展覧会場

    青木はこの後、入念な準備を経て「わだつみのいろこの宮」を作成、1907年春の東京府勧業博覧会に出品しましたが、好評を博したものの三等末席に終わります。大きな自信を持っていた青木はこの結果に憤慨し、美術評論誌に不満の意見を投稿しています。

    同年8月、父危篤の報を受けて青木繁は久留米に帰省。これが青木の人生のターニングポイントとなります。家族と離れて九州各地を放浪、中央画壇への復帰を画策しますが、ついにその夢もかないませんでした。1910年に肺病で入院。死を覚悟した青木は、姉と妹に宛てた自らの不幸・不運を嘆く遺書ともいえる手紙を残し、翌年に28歳の若さで亡くなりました。

    生前は決して恵まれていたとはいえない青木繁ですが、才能を惜しんだ友人たちによって、死の翌年には早くも遺作展が開催されます。遺作展を見た夏目漱石は青木のことを天才と呼び、戦後になって評伝が刊行されると評価が高まりました。「海の幸」と「わだつみのいろこの宮」は重要文化財となり、今や青木の作品は、美術や歴史の教科書でもお馴染みになりました。

    青木は遺品が少ないこともあり、単独での回顧展はあまり開かれていません。最後の回顧展は1972年なので、本展は実に39年ぶりとなります。

    青木の全作品の半数以上にあたる約300点を紹介するというこれまでにない規模で、久留米の石橋美術館、京都国立近代美術館と巡回して、ついに東京にやってきた青木繁展。 学生時代の作品から絶筆まで、眩い煌めきを放った若き天才画家の歩みをご覧ください。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年7月19日 ]
     
    会場
    会期
    2011年7月17日(日)~9月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00-18:00
    (祝日を除く毎週金曜日は20:00まで)

    【日時指定予約制】
    入館までの待ち時間の緩和、より快適な鑑賞環境をご提供するために、1日を以下の入館時間枠に区切り、その時間枠内にご入館頂きます。
    ①10:00-11:30  
    ②12:00-13:30  
    ③14:00-15:30 
    ④16:00-17:30
    ⑤金曜日のみ 18:00-19:30(ただし祝日を除く)

    ※指定した時間枠内であれば、いつでもご入館頂けます。
    ※入館後は閉館まで時間制限なくご鑑賞頂けます。入替制ではありません。
    ※各時間枠の開始時刻直後は混雑が予想され、入館をお待ち頂く場合があります。
    休館日
    毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間、臨時休館日
    ※展覧会によって異なる場合があります。
    住所
    東京都中央区京橋1-10-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.bridgestone-museum.gr.jp
    展覧会詳細 「没後100年 青木繁展」 詳細情報
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