私たち人間を含む哺乳類。国立科学博物館では2010年に「大哺乳類展 陸のなかまたち/海のなかまたち」、2019年に「大哺乳類展2 みんなの生き残り作戦」が開催され、それぞれ人気を博してきました・
3回目の大哺乳類展は「分類(=わける)」と「系統(=つなぐ)」がテーマ。哺乳類の親戚関係について考えていく展覧会が開催中です。
国立科学博物館「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」会場入口
展覧会は4章構成で、第1章「哺乳類とは」から。母親が乳を与えて子を育てる脊椎動物、哺乳類。さまざまな空間で生き、極地から熱帯まで多様な環境に体や生き方を適応させてきました。
ここでは哺乳、胎生、体骨格、耳小骨、心臓という5つの形態的特徴から、哺乳類をみていきます。
第1章「哺乳類とは」
展覧会前半の目玉といえるのが、巨大な心臓です。カナダのロイヤルオンタリオ博物館が所蔵する、現在地球上で最大の動物であるシロナガスクジラの心臓の、実物大レプリカが展示されています。
高さ約166cmと、人間の背丈ほどもある大きさです。
シロナガスクジラ心臓(実物大レプリカ)ロイヤルオンタリオ博物館所蔵 © Royal Ontario Museum
第2章は「分類と系統 ― わけるとつなぐ ―」。あらゆる自然史研究の基礎といえる分類学。ただ、生き物は見た目だけでは分けることはできません。
まず「種」とは、自然状態で永続的に交配が可能な集団のこと。例えばヒョウとライオンを交配させて生まれた「レオポン」は繁殖能力がないため、ヒョウとライオンは別種ということになります。
第2章「分類と系統 ― わけるとつなぐ ―」
第3章は「リアル哺乳類図鑑 ― わけてつなげて大行進 ―」。国立科学博物館にある8万点以上の哺乳類の標本から、第2章で学んだ分類・系統に沿って基本に忠実に紹介していきます。
現在、哺乳類は27目に分類されており、壁沿いでは、図鑑をめくるように各目がひとつずつ紹介されます。
第3章「リアル哺乳類図鑑 ― わけてつなげて大行進 ―」
展示の途中には「コラム」コーナーも。「見た目にだまされるな」を合言葉に、特に収斂進化にまつわるトピックが取り上げられています。
木から木へ滑空する哺乳類に見られる皮膜は、フクロモモンガ、マレーヒヨケザル、そしてコウモリ類とさまざまな動物に見られますが、それぞれ同じ種類ではありません。
第3章「リアル哺乳類図鑑 ― わけてつなげて大行進 ―」
そして、展覧会の目玉といえる「哺乳類大行進」。「わける」「つなげる」をモチーフに、系統関係の順に200体以上の標本を配置しました。
現在、ほぼ定説となっている哺乳類の6つのグループ(原獣類、有袋類、アフリカ獣類、異節類、ユーアーコンタグリレス、ローラシアテリア)を分けるだけでなく、それぞれのエリア内でも詳細な系統を重視して展示しました。
第3章「リアル哺乳類図鑑 ― わけてつなげて大行進 ―」 哺乳類大行進
同じ哺乳類でもここまでカタチが異なるという不思議さを、改めて感じられるこのコーナー。どこを撮影しても絵になる展示です(会場内の撮影も可能です)。
キタゾウアザラシや、小さなシカの仲間のブーズー、クロサイの赤ちゃんなどの標本は、本展で初公開になります。
第3章「リアル哺乳類図鑑 ― わけてつなげて大行進 ―」 哺乳類大行進
最後の第4章は「哺乳類の分け方 ― 過去から未来へ ―」。分類学の歴史を、最新の研究結果も含めて紹介します。
動物を研究し、現在まで伝えられる書物の形にまとめた最初の人は、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスです。当時、ハイエナは両性具有とされていましたが、アリストテレスは、オスは精巣を、メスは子宮を持つことをつきとめました。
ブチハイエナ
分類学は進歩が進み、現在では27目1,332属、6,500種以上にわけられる哺乳類。ただ、21世紀に入ってからも10mを超える大型ヒゲクジラの新種が発見されるなど、我々を取り巻く周囲環境は調査し尽くされたわけではありません。
科博ならではのスケールの大きさを感じさせる、親子で楽しめる展覧会です。同じグループに分類される哺乳類が合体した、楽しいオリジナルグッズも用意されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年3月15日 ]