アートと物語を没入体験する体験型デジタルアート劇場が、角川武蔵野ミュージアムではじまります。 昨年開催された「浮世絵劇場 from Paris」に続き第2弾となる本展では、フィンセント・ファン・ゴッホの作品を紹介しながら彼の世界観を追体験できます。
角川武蔵野ミュージアム
今回のデジタルアートのディレクターは、没入型(イマ―シブ)インスタレーションの先駆者として30年間にわたり世界各地で展覧会を開催しているイタリア出身のジャンフランコ・イアヌッツィ。ゴッホの作品と生涯を8幕に分けて通観していきます。
第5幕「オリーブの木と糸杉(Olive trees and cypresses)」
第1幕の「若き日のゴッホ」では、母国であるオランダでの単調な風景作品からゴッホを振り返ります。
暗い色彩で描かれた労働者はゴッホの初期作品によく見られる主題で、晩年の色鮮やかな作品とは対照的です。ここでは《ジャガイモを食べる人々》や《土を掘る農婦》が登場します。
第1幕「若き日のゴッホ」
ファン・ゴッホの作品として最も有名な《ひまわり》。第2幕「自然(Nature)」では1888年にアルルで描かれた7点の《ひまわり》をはじめ、アイリス畑やアーモンドの木などの色彩豊かな作品を紹介します。
第2幕「自然(Nature)」
第4幕の「アルル(Arles)」では住まいであった《黄色い家》が現れます。南フランスのアルルで在住時に拠点としたこの家の寝室を描いた《ファン・ゴッホの寝室》《アルルの寝室》など、会場は黄色と青の補色を組み合わせた空間に染まります。
後半には、生涯に出会ったモデルの肖像画や弟テオと交わした手紙が床と壁の上を流れます。
第4幕「アルル(Arles)」
第5幕はファン・ゴッホが主題として繰り返し取り上げたオリーブの木と糸杉が目に飛びこんできます。会場内は、自由に歩きまわることも可能です。星空の下、青一色に覆われた空間に包まれて、ハンモックで揺られながら鑑賞することもできます。
第5幕「オリーブの木と糸杉(Olive trees and cypresses)」
ファン・ゴッホは10年ほどの画業の中で、多くの自画像を描いたことでも有名です。第6幕「サン=レミ(Saint Remy)」では多くの自画像が紹介されます。
1890年7月29日に37歳の若さで没したファン・ゴッホ。自身の内面を表現しているかの様な力強い線と強烈な色からは、彼の苦悩する魂も感じることができます。
第6幕「サン=レミ(Saint Remy)」
体験型デジタルアート劇場を終えた後は第2会場へ。ファン・ゴッホの年表と手紙をもとに「知っているようで知らないゴッホの生涯」を辿っていきます。
自身の悩みや絵に対する思いを書きつづった手紙を家族や友人に数多く送っているファン・ゴッホ。画家になる以前から、弟テオの助言で画家になる決意をした後の生活を手紙からも感じとることができます。
第2会場 「ファン・ゴッホの手紙」
最後のコーナーでは“あなたがファン・ゴッホに手紙をおくる”こともできます。彼の生涯や作品を通して感じたことをメッセージにしてみては。
第2会場 「ファン・ゴッホの手紙」
鑑賞後には2Fのカフェ「KadoCafe」もおすすめです。フィンセント・ファン・ゴッホの作品がプリントされた「ラテdeゴッホ」をお楽しみいただけます。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年6月16日 ]