室町時代に重用された唐物(中国由来の文物)。狩野元信は、中国人画家の作品に基づく筆用(画家のスタイル)を整理し、真・行・草の三つの画体を創りました。
狩野派は、時の権力者と強い結びつきがありました。為政者が求めた作品も多く、展覧会メインビジュアルの狩野探幽《両帝図屏風》も、中国の皇帝が画題です。豪華な画面には金箔、金泥、金砂子と、多彩な技が使われています。
もともと金を使った屏風は、やまと絵にみられた手法です。記録に残る狩野派による初の金屏風制作は、明の皇帝への献上品でした(戦国大名の大内義隆が狩野元信に発注したものです)。
中国由来の水墨画を整理し、日本風の画材である金を使って、中国に献上した元信。本朝画史(江戸時代に書かれた日本初の画人伝)に「漢にして倭(和)を兼ねる」と称される所以です。
展示室1展示室2の主役は京狩野。徳川幕府の御用絵師となった探幽による江戸狩野に対し、京都に残ったのが京狩野です。
久隅守景は探幽の門下生。比較的、淡泊な江戸狩野に対し、濃厚な表現は京狩野の特徴です。よく見ると、顔の部分に胡粉が盛り上げられているのは、京狩野の影響でしょうか。
狩野山雪《梟鶏図》は、夜の梟(フクロウ)と朝の鶏を対比させた作品です。ともに、目線は上方をギョロリ。特にフクロウの表情がユーモラスです。
展示室2展覧会は2月12日(月・祝)までですが、一部の作品は展示替えがあります。テーマ展示では、新年恒例の《百椿図》も出陳中です(展示室5)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年1月9日 ]■根津美術館 墨と金 に関するツイート