1995年にオープンした複合施設「増田ふれあいプラザ」内に設けられていた、旧・増田まんが美術館。マンガの原画を多数展示する美術館は、全国でも例のない施設として話題となりました。
リニューアルのきっかけは、増田出身の漫画家・矢口高雄さんからの原画寄贈でした。「釣りキチ三平」で知られる矢口さんは、2015年にマンガ原画約4万5000枚を横手市に寄贈。これを機に横手市は、まんが美術館の大改修に乗り出しました。
リニューアルを手掛けたのは、旧・まんが美術館も担当した(株)丹青社。建物は以前と変わりませんが、全館がまんが美術館になったため、美術館としては10倍以上の拡張になります。
では早速、館内をご紹介しましょう。エントランスから入ると、インフォメーション奥のマンガウォールがお出迎え。誰もが知っている定番マンガの名シーンが壁を埋め尽くします。
1階の左手奥が、増田の特徴である‘内蔵(うちぐら)’からネーミングした、マンガの蔵展示室。マンガ原画の保存と活用を両立させる、新施設の核といえる場所です。
国内にある多くのマンガ関連施設が、漫画家個人の記念館的な施設であるのに対し、増田まんが美術館は多くの漫画家(3/31現在で179人)の原画を収蔵。「魅せる収蔵庫」として、原画をデジタルアーカイブ化する作業も見学できます。
アーカイブ化は、1200dpiという高い解像度で保存。大型のタッチパネルで拡大すると、漫画家の情熱が迫ってくるようです。
常設展示へのプロローグとして、マンガ文化展示室では美術館の役割などを紹介。常設展示室はシンボルツリーを囲むスロープを進むと、計74名分の原画が展示されています。
2階には、マンガ関連グッズなどを紹介するミニギャラリーと、心に響くセリフを集めた名台詞ロード。セリフは随時、更新されていきます。
もちろん、実際にマンガを読む事も可能です。マンガライブラリーには単行本や雑誌、約2万5000冊を用意しており、バルコニーも含め、館内ならどこに持ち出して読んでも構いません。
1階のマンガカフェは、壁面がコマ割り。訪れた作家たちが、徐々にコマを埋めていきます。ミュージアムショップ「Straw Hat」では、多数のオリジナルグッズが用意されました。
ユニークな見どころとして、トイレにも注目。小便器の前の擬音は、便器の前の釣りキチ三平のシーンと一致しています。
まんが美術館近くには、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている町並みがあり、前述した内蔵を有する大型の町屋が数多く残っています。ご当地グルメとして、目玉焼きがトッピングされた横手焼きそばや、細い縮れ麺の十文字ラーメンもオススメです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年4月10日 ]