学生・教員の作品収蔵や、篤志家からの寄贈もあり、今なお成長を続ける藝大コレクション。もちろん喜ばしい事ですが、一方で全体像が把握しにくくなっているともいえます。
本展は130年という節目を機に、改めて藝大コレクションの意義を再考する企画。しばらく展示されていなかった作品が出る事もあり、まさに「パンドラの箱」を開けたような展覧会となりました。
まずは「名品編」と題して、古美術や日本画・洋画の名品を紹介。初期の東京美術学校では生徒の制作の参考として古美術品を購入しており、後に指定文化財になったものも少なくありません。戦前期までは同時代の作品を積極的に収蔵。明治期の美術作品は質・量ともに国内有数のコレクションとなっています。
奥では「平櫛田中コレクション」を展示。彫刻家の平櫛田中は自身の作品と収集した彫刻を藝大に寄贈しており、これらは定期的に公開されています。
会場(地下2階)上階には、藝大コレクションの中核をなす卒業制作の数々が展示されています。第1回の卒業生は横山大観や下村観山ら(最初は洋画はありません)。美術史に残る大家が若かりし頃に描いた意欲作をまとめてみる事ができるのは、藝大コレクションならではの特徴です。
「現代作家の若き日の自画像」も、見せ場のひとつ。藝大コレクションには学生の自画像が6,000点以上ありますが、他館で開催される展覧会も含めて展覧会に出品されるのは青木繁や藤田嗣治などごく一部。今回は1950年代から1980年代に生まれた作家の自画像が紹介されています。千住博、福田美蘭、村上隆、山口晃、松井冬子ら、現在活躍中の作家がずらり。川俣正、会田誠らは、いわゆる「自画像」とはやや異なった表現です。
さらに、似た作品を並べた展示や、普段はあまり出ない石膏原型の展示、近年修復された作品も紹介。会場後半には藤田嗣治資料もあります。
会場(3階)コレクションが膨大という事もあり、展覧会は2期に分けて開催。8月11日(金)から第2期に入ります。多くの作品が展示替えされていますので、ご注意ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月12日 ]■藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた! に関するツイート