前回の
特別展「深海」はダイオウイカが中心でしたが、今回は深海調査そのものが主役。深海調査の背景や意義、そして深海から見えてきた事まで幅広く紹介していきます。
展覧会は6章構成で、第1章は「深海とは」。海洋生物学では、太陽の光が届きにくくなる水深200mからが「深海」。水圧は海水の重さなので、潜ったぶんだけ増加。水深6,500mだと、親指の爪ぐらいの面積に軽自動車1台の水圧がかかります。
第2章は「深海と生物」。今回、大きく紹介されているのが発光生物。深海では90%以上の種が生物発光するといわれており、体から光る粒子を放出するクラゲなど珍しい生物が映像でも紹介されています。奥に進むと巨大生物もあり、ダイオウイカも展示されています。
第1章「深海とは」、第2章「深海と生物」第3章は「深海と巨大災害」。3.11の後に調査された場所は、なんと水深7000m。富士山ほぼ二つ分という深海で、地質試料を採取し、残っている摩擦熱を測るという難プロジェクトを成功させました。その成果は巨大地震・津波シミュレーションにも活かされています。
国土は狭い日本ですが、EEZ(排他的経済水域)は世界6位。海底に眠るエネルギー資源への期待は高まっています。天然ガスの一種であるメタンハイドレートや、海底堆積物中のレアアースについて、第4章「深海と資源」で解説されています。
第3章「深海と巨大災害」、第4章「深海と資源」外界からの影響を受けにくそうな深海ですが、地球表層の環境変動と無縁ではありません。第5章「深海と地球環境」では、海洋の酸性化についても紹介。炭酸カルシウムの殻をつくる海洋生物は殻が薄くなっており、生物多様性や海洋生態系に影響するかもしれません。
第2会場に移って、最後の第6章は「深海を調査する機器」。2016年に竣工した最新鋭の海底広域研究船「かいめい」には船内に充実したラボ施設があり、採取した試料を新鮮な状態で分析可能。有人潜水調査船「しんかい6500」は耐圧殻内部の機器配置を変更し、観測者が1名増やせるようになりました。
第5章「深海と地球環境」、第6章「深海を調査する機器」展覧会と同時にお勧めしたいのが公式図録(税込 2,200円)。やや専門的な内容を豊富な写真と図版で分かりやすく解説しており、これさえ読めばあなたも深海ツウ。幅広い方にお楽しみいただけると思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月10日 ]■特別展「深海2017」 に関するツイート