20世紀美術に繋がる重要な美術運動でありながら、注目度が高いとはいえなかったナビ派。ただ、近年は注目が集まりつつあり、ナビ派の一員である
ヴァロットンの展覧会も、2014年に同じ三菱一号館美術館で開かれて注目を集めました。
展覧会はナビ派の精神的支柱、ゴーガンの作品から。印象派を離れたゴーガンは、浮世絵版画などの影響を受けてモチーフを単純化。ゴーガンの薫陶を受けたのがポール・セリュジエです。
第2章は「庭の女性たち」。ナビ派が描く女性は風景に溶け込み、自然と一体化したような作例も見受けられます。四季を思わせる4点の大作は、ピエール・ボナールによる「庭の女性たち」の連作。ボナールは「日本かぶれのナビ」と呼ばれ、本作も日本美術からの影響が顕著です。
第1章「ゴーガンの革命」、第2章「庭の女性たち」ナビ派の作品では、室内の私的なシーンを覗き見たような、親密度が高い場面もしばしば描かれます。ボナールの《ベッドでまどろむ女(ものうげな女)》は、明らかに情事の後を想わせる作品。ヴァロットンによる室内の風景は、静けさの中に独特の緊張感が漂います。
4章では肖像画や自画像を紹介。ヴュイヤールの《八角形の自画像》は、2015年にオルセー美術館に新規収蔵されたばかり。細部の描写は避ける事で、画家の視線が強調されています。
第3章「親密さの詩情」、第4章「心のうちの言葉」第5章は「子ども時代」。日常生活を描いた作品の中で、子どもは定番といえる主題のひとつ。ただナビ派の作品は、単に「愛らしい」だけではなく、幼少期の不安や危うさなど、影の部分にも目を向けている事も特徴的です。
さらにナビ派は、精神性や宗教など、目に見えない世界にも関心を寄せていました。「神殿」と称していたポール・ランソンのアトリエに集い、聖書や秘教の書物を研究しながら、創作に取り入れたナビ派の画家たち。象徴派の詩人や作家とも交流し、超自然的な世界を目指しました。
第5章「子ども時代」、第6章「裏側の世界」展覧会タイトルに「ささやきとざわめき」とあるように、相反する二面性こそがナビ派の真実。新たな表現の追及は、後年のフォーヴや抽象美術にも繋がっていきました。活動期間は決して長くありませんが、美術史の面からももっと注目されていい一群です。
オルセー美術館が所蔵するナビ派作品だけを集めた展覧会は、今回が初めて。巡回はせずに、
三菱一号館美術館だけでの開催です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年2月3日 ] | | かわいいナビ派
高橋 明也 (著), 杉山 菜穂子 (著) 東京美術 ¥ 1,944 |
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