奈良時代最高の文物を有する正倉院に対し、平安時代最高の工芸品がある春日大社(そのため「平安の正倉院」といわれます)。京都は応仁の乱で、奈良も南都焼討で壊滅的な被害を受けていますが、春日大社だけは難を逃れたため、ここにしかない貴重な宝物が残っています。
2016年には60回目の式年造替(約20年ごとに行われる、社殿の建て替えや修繕)が行われた春日大社。大きな節目に実現した本展を、ここでは展示室ごとにご紹介いたします。
第1展示室は、春日大社のシンボルといえる神鹿にかかわる美術から。奥に進むと、普段の参拝では近づく事ができない国宝・春日大社本殿(第二殿)の再現もあります。
展覧会前期の目玉といえる国宝《金地螺鈿毛抜形太刀》も、第1展示室で紹介。近年の調査で、柄や鍔など金具の多くがメッキではなく純度の高い金で作られている事も分かり、話題になりました。正に平安時代の最高傑作、良く見ると鞘の表裏には愛らしい猫の姿も見られます(展示は2月19日まで)。
展示室1展示室2にも、さまざまな武具が。平安時代に貴族が奉納したのは儀仗用の性格が強い武具ですが、鎌倉時代以降になると、より実用的な武具が武家によって奉納されています。
展示されている甲冑も、鎌倉時代以降のもの。会期前半に展示されている甲冑は2領とも国宝ですが、後半には別の国宝甲冑が2領登場。2月14日~2月19日のみ、国宝甲冑が4領まとめてご覧いただけます。
会場最後には、狛犬がずらり。春日大社の本殿の第一~第四殿の前に一対ずつ置かれていたもので、今回の式年造替を機に本殿を離れて保存される事になりました。
「狛犬」と言いましたが、実は狛犬と獅子で1セット。角があるのが狛犬、無いのが獅子です。顔つきがユニークなものも多いので、全部撮影してみました。
展示室2写真と動画ではご紹介できませんでしたが、宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵している名高い絵巻《春日権現験記》も出陳されています(前期は巻二十、後期は巻十二)。平成館の企画展示室で同時開催中の「春日権現験記絵模本III―写しの諸相―」展もあわせてお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年1月16日 ]※会期中に展示替えがあります。
■春日大社 千年の至宝 に関するツイート