IM
    レポート
    山岸凉子展 「光 -てらす-」 ―メタモルフォーゼの世界―
    弥生美術館 | 東京都
    ファン待望、初の大規模展
    「アラベスク」や「日出処の天子」などの大ヒット作で知られる漫画家・山岸凉子(1947-)さん。デビューから最新作までの画業をたどる初めての本格的な展覧会が、弥生美術館で開催中です。
    (左から)「日出処の天子」『LaLa』1980年8月号 扉 原画 / 「日出処の天子」『LaLa』1982年2月号 付録(カレンダー) 原画
    (左から)「日出処の天子」1982年発売 カレンダー表紙 原画 / 「日出処の天子」『LaLa』1984年6月号 扉 原画
    (左から)「アラベスク 第2部」『花とゆめ』1974年6号 原画 / 「アラベスク 第2部」『花とゆめ』1975年6号 扉 原画
    (左から)「妖精王」『花とゆめ』1977年9号 扉 原画 / 「妖精王」『花とゆめ』1977年11号 原画
    (左から)「白い部屋のふたり」『りぼんコミック』1971年2月号 原画 / 「ひまわり咲いた」『りぼん』1970年7月号 付録 原画
    (左から)「私の人魚姫」『別冊少女フレンド』1974年1月号 原画 / 「クリスマス」『プリンセス』1976年1月号 扉 原画
    (左から)「鳥向楽」『ASUKA』1986年11月号 原画 / 「セイレーン」『花とゆめ』1977年3号 原画
    (左から)「花の精たち」『LaLa』1976年創刊号 表紙 原画 / 「ムーサイ」『LaLa』1976年創刊号 口絵 原画
    (左から)「鳥向楽」『ASUKA』1986年11月号 扉 原画 / 「ダフネー」『プチフラワー』1981年冬の号 扉 原画
    バレエ、神話、歴史、ホラー、エッセイなど、幅広い分野の作品でファンを魅了する山岸凉子さん。最初にご紹介するのは、一世を風靡した「日出処の天子」です。

    主人公の厩戸王子(後の聖徳太子)は妖艶な美少年で、蘇我毛人(蝦夷)を慕う同性愛者という衝撃的な設定。連載が始まった1980年は聖徳太子は「1万円札の人」であり、少女漫画の世界観とは真逆といえる存在でしたが、繊細な描写は物語にリアリティを持たせ、熱狂的な支持を受けました。

    1984年まで連載され、第7回講談社漫画賞少女部門を受賞。連載中は「熱量みたいなものが落ちて」きたそうで、ご自身も“のって”描いた作品と言います。


    「日出処の天子」

    山岸さんの名を世に知らしめたのが、1971年に発表されたバレエ漫画の「アラベスク」です。

    「主人公のトゥシューズに画鋲が入れられる」などが定番のバレエ漫画は、すでに時代遅れ。編集部も難色を示し「3話で終わらせるなら」と言われて始まりました。

    自身も幼少の頃からバレエを習っていた山岸さんは、バレエを厳しく追及する姿を、正確な身体描写で表現。読者の人気投票で1位となり、3話で終了どころか「できるだけ長くのばして」と編集に懇願されました。


    「アラベスク」

    会場2階では、デビューから近作まで約50年の歩みが一気に紹介されています。

    北海道で生まれ育った山岸さん。同学年の里中満智子さんが16歳でデビューした事に衝撃を受けて漫画の道へ進む事を決意します。出版社に作品を持ち込み、1971年に「レフトアンドライト」でデビュー。まだ21歳でしたが、当時は10代でデビューする少女漫画家が多く、非常に焦っていたと言います。

    デビュー当初は作風も大分違いますが、これは「丸い顔の絵」でないと受け入れられない事が分かっていたため。もちろん表現力も向上していますが、キャラクター描写については「絵が変わった」のではなく、「本来の絵に戻った」という方が正確かもしれません。


    デビューから『ASUKA』での仕事まで

    47歳でバレエを再開した山岸さんは、2000年から再び長編のバレエ漫画「テレプシコーラ -舞姫-」を連載。ローザンヌ国際バレエコンクールを何度も取材するなど丹念に世界観を作り上げ、2007年に第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。

    2000年代には「ヴィリ」「言霊」「ケサラン・パサラン」などを執筆し、2015年からは『モーニング』で「レベレーション(啓示)」の連載を開始。山岸さんの作品で女性が主人公の場合は、比較的弱いタイプが多い中、本作の主人公は強い女性の代表格ともいえるジャンヌ・ダルク。今後の展開も注目されます。


    2000年代の作品

    若い頃は“原稿料はすべて資料に注ぎ込む”と決めていた、という山岸さん。洋書の画集を買い求めては熱心に研究しており、ビアズリー、ミュシャから琳派まで、先人の絵画から想を得た作品も見事です。

    展覧会にあわせて初の本格的な画集も刊行されており、こちらは会場でも販売されています。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年10月3日 ]

    ※会期中展示替えがあります
     前期:9月30日(金)~10月30日(日)
     中期:11月1日(火)~11月27日(日)
     後期:11月29日(火)~12月25日(日)

    ※前期と後期の展示作品は同じです。
    ※全体の構成はほぼ変わらず、展示される原画が入れ替わります。

    山岸凉子画集:光山岸凉子画集:光

    山岸凉子 (著)

    河出書房新社
    ¥ 3,240


    ■山岸凉子展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年9月30日(金)~12月15日(木)
    会期終了
    開館時間
    午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分までにお願いします)
    休館日
    月曜日 ※ただし10/10(祝月)開館、翌10/11(火)休館
    住所
    東京都文京区弥生2-4-3
    電話 03-3812-0012
    公式サイト http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
    料金
    一般900円/大・高生800円/中・小生400円
     (竹久夢二美術館もご覧いただけます)
    展覧会詳細 山岸凉子展 「光 -てらす-」 ―メタモルフォーゼの世界― 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    【八尾市立歴史民俗資料館】学芸員募集(歴史担当)/※要学芸員資格 [契約社員/正社員登用制度あり]◆年休120日以上・未経験も歓迎! [八尾市立歴史民俗資料館]
    大阪府
    荻窪三庭園 施設管理運営スタッフ募集! [荻窪三庭園]
    東京都
    国立科学博物館 事務補佐員(短時間勤務有期雇用職員) [独立行政法人国立科学博物館 上野本館]
    東京都
    国立科学博物館 特定有期雇用職員(特定非常勤事務職員) [独立行政法人国立科学博物館 上野本館]
    東京都
    横浜みなと博物館ミュージアムショップ アルバイト募集! [帆船日本丸・横浜みなと博物館]
    神奈川県
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    モネ 睡蓮のとき
    開催中[あと78日]
    2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
    2
    麻布台ヒルズ ギャラリー | 東京都
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと69日]
    2024年11月1日(金)〜2025年2月2日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    田中一村展 奄美の光 魂の絵画
    もうすぐ終了[あと6日]
    2024年9月19日(木)〜12月1日(日)
    4
    日本科学未来館 | 東京都
    特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」
    開催中[あと71日]
    2024年11月6日(水)〜2025年2月4日(火)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい鳥類の系統~」
    開催中[あと91日]
    2024年11月2日(土)〜2025年2月24日(月)