展覧会のキャッチコピーは「カラダが語りだす、世界の隠された物語」。1人ずつ作品をご紹介いたします。
アフリカ系英国人のインカ・ショニバレ MBE(1962-)は、アフリカ更紗を用いた立体作品を出品。民族的なルーツであるアフリカと、現在の拠点である欧州の関係を示します。
映像作品ではアフリカ更紗のドレスを来た黒人女性が、オペラ「椿姫」の一節を繰り返し熱唱。英国の英雄・ネルソン提督の死をめぐる逸話も作中で表現されます。
インカ・ショニバレ MBE、左:《蝶を駆るイベジ(双子の神)》2015、右:《さようなら、過ぎ去った日々よ》2011 (会場風景) Courtesy the artist and James Cohan Gallery, New York
展覧会のビジュアルイメージの中でもインパクトが強い、長い黒髪で顔を覆い隠した女性たち。日本なら“貞子”ですが、東南アジアでも“ポンティアナック”は良く知られた女性の幽霊です。しばしば小説や映画で表現され、現世に憎しみを残した女性の象徴といえます。
作家はマレーシアのイー・イラン(1971-)。現代のポンティアナックたちは、台本無しの自由な会話で、女性の役割や意味について赤裸々に語ります。
イー・イラン《ポンティアナックを思いながら:曇り空でも私の心は晴れ模様》2016 (会場風景) ©Yee I-Lann
タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン(1970-)は、注目のクリエイター。監督・脚本を手掛けた映画『ブンミおじさんの森』が、2010年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞。今年は日本国内のさまざまな美術館やアートフェスティバルに招待されています。
炎を吐き出しながら回りつづける扇風機の映像作品《炎(扇風機)》は、日本初公開。エントランスで紹介される《ナブアの亡霊》にも火が登場します。どこか詩的で象徴性に満ちた表現は、作家が得意とするところです。
アピチャッポン・ウィーラセタクン《炎(扇風機)》2016 / 《ナブアの亡霊》2009 (会場風景) Courtesy of Apichatpong Weerasethakul
ベトナムで生まれ、米国で学んだウダム・チャン・グエン(1971-)。エントランスから見えるビニールチューブは、作品《ヘビの尻尾》の一部です(映像も含めたインスタレーション)。映像ではホーチミン市内のビルから延びるチューブは大蛇のようで、歴史上の神と人間をめぐる複数の神話のイメージが重なり合います。
もうひとつは映像作品の《機械騎兵隊のワルツ》。ベトナムの伝説で、国を守る英雄“ゾン将軍”のイメージを、現代の戦士の隊列として表現しています。
ウダム・チャン・グエン《ヘビの尻尾》2015/2016 / 《機械騎兵隊のワルツ》2012 (会場風景) ©UuDam Tran Nguyen. Courtesy of the artist.
写真に出会う前は、自殺する事ばかり考えていたという石川竜一(1984-)さん。石川さんが日本各地で出会った人々のポートレートからは、それぞれの人生が透けて見えます。
後半には、石川さんがかつて道端で声をかけて、その後もつきあいが続いた二人をテーマにした作品。こちらは写真と手書きのテキストによる構成です。
石川竜一《portraits 2013-2016》2013-2016 / 《小さいおじさん》2012-2014 / 《グッピー》2011-2016 (会場風景) ©Ryuichi Ishikawa
日本の田村友一郎(1977-)さんは、日本の戦後史と身体をめぐるインスタレーション作品。グランドギャラリー(エントランスロビー)と最後の展示室で紹介されています。
肉体を筋肉ごとに断片で捉えるボディビルディングに興味があるという田村さん。肉体に関連する言葉のやりとり、断片化した彫像、時間が重なり合った横浜の地図などが展示されています。無言でビリヤードに興じる4人のボディビルダーも登場しましたが、こちらは内覧会のみの演出です。
田村友一郎《裏切りの海》2016 (会場風景)
会期中には出品作家が登場するイベントなど、関連企画も多数開催。また会場内は一部を除き、写真撮影も可能です。ツイッターやインスタグラムでハッシュタグ「#yokohamamuseumifart」をつけて、拡散お願いいたします。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年9月30日 ]
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