昭和29年(1954)に開館した相撲博物館の収蔵品の基礎となっているのが、初代館長の酒井忠正による相撲資料のコレクションです。旧姫路藩酒井家を継ぎ、昭和戦前に農林大臣や貴族院副議長を歴任した政治家でもあった酒井は、幼いころから相撲を好み、実際に相撲を取り、大相撲を観戦しただけではなく、絵はがきからはじめた相撲資料の収集は、錦絵、番付、勝負付、書籍、雑誌などあらゆる範囲に及んだほか、自ら相撲の絵を描いたり、人形を制作したりしました。旧大名家の当主、伯爵だったことから「相撲の殿様」と呼ばれ、相撲への見識の高さから横綱審議委員会の初代委員長を務めました。また、集めた資料を活用して相撲の歴史の研究にいそしみ、執筆した『日本相撲史』(上・中)は今も相撲研究のバイブルとなっています。
本年は酒井没後40年にあたります。一万点を超えるとされる膨大な酒井忠正コレクションのごく一部ではありますが、錦絵の秀品や初公開となる酒井による双葉山の肖像画、直筆原稿をはじめ、酒井ゆかりの資料の数々を展示いたします。ひたすら相撲を愛した酒井の情熱を感じていただければと思います。