本展は、新世紀の建築の動向を切り取る存在である2人の建築家の展覧会です。2人に共通するのは、20世紀の初頭に出てきた“モダニズム”(機能性や合理性に基づき、装飾を排して、幾何学的な構成を行うデザイン)の無機的で画一的な側面とは別の“もうひとつのモダニズム”をめざし、模索し、提示しているということです。
既存の建築とは異なる発想をもちかたちの形式を実験する2人が、KPOキリンプラザ大阪を舞台に発泡スチロールという素材を用いて、遠藤は建築をつくる上でのアイデアを立体化し映像と共に展示し、藤本は本展のために考えた住宅案を人の入れる実物サイズで展示します。模型だけではなく、映像を使った体験型インスタレーションは、建築家の持つ世界観や空間を体感することができます。
コルゲート鋼板(波形の建築資材)を回転させることによって大胆な造形空間を生み出す遠藤秀平は、コンセプトを示す言葉として“パラモダン”という造語を提唱しています。これはすでに捨て去られた概念の可能性を再検討できないだろうかという試みです。それは “もうひとつのモダニズム”にも重なり合う概念ともいえます。また、アメーバのような形の施設や板を何層にも連ねた、階段状の家などなど既存の概念にとらわれない計画を打ち出す藤本壮介は、「弱い建築」「五線のない楽譜」「離れていて、同時につながっている」「居場所の建築」「プリミティブフューチャー」など不思議なキーワードを使い自身の建築を語ります。空間の根源的な可能性を真摯に探り、新しい価値観、ものを見るときの枠組みを作り出す新しい世代の代表といえるでしょう。