芸能界には絵が得意な方が少なくありませんが、‘ノリさん’こと木梨憲武さんもその一人。創作は趣味の域を超えており、絵本やポスター、本の表紙やCDジャケットまで手掛けています。
本展では制作をはじめた1994年頃の作品から最新作まで、20年に及ぶ作品の数々を紹介。全国に巡回する本格的な展覧会です。
会場入口から
ノリさんが絵を描きはじめたきっかけは、テレビ番組の企画でした。1994年の「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」でパリに行き、岡本太郎のキャラクターに扮する「憲太郎」として現地の若いアーティストと対決。下描きなしで、マジックで風景を一気に描きました。
会場ではその時に描いた《セーヌ川》をはじめ、多くの作品を紹介。絵画が中心ですが、オブジェや映像なども展示されています。
動画の最初が、“憲太郎”として描いた最初の作品《セーヌ川》1994年
自らの創作について「その日に起きた事を自由に描く、絵日記のようなもの」というノリさん。その時々のフィーリングで、テイストの異なる作品を仕上げていきます。
旅先にも画材道具を持ちこみ、異国の空気を感じながらその場で制作。極細のペンが手に入ると、何百人もの友達がつながった緻密なペン画を描きます。
旅先のドローイングと、緻密なペン画《Friends》2003年
展示作品は全328点とかなりのボリュームですが、メリハリをつけて巧みに展示したのは、妻の安田成美さんです。
ノリさんが作った作品は、全て把握しているという成美さん。影のプロデューサーともいえる立場で、会場を構成していきました。
会場最後の壁面は圧巻
会場の最後には、東日本大震災後に思いを込めて描いた「太陽」も展示されています。全国から送られて来た「みんなの太陽」のコーナーで紹介し、サンドウィッチマンが被災者を支援するために開設した「東北魂義援金」への募金箱も設置されました。
上野の森美術館の後は、金沢21世紀美術館(2014年7月17日~8月15日)、盛岡市民文化ホール(2014年8月20日~9月28日)、兵庫県立美術館(2014年10月8日~11月9日)、長崎県美術館(2015年3月6日~4月12日)、福岡アジア美術館(2015年4月17日~5月24日)と巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年5月19日 ]
※作品は全て©NORITAKE KINASHI