《BJ.MACKEY》1982年 岐阜県美術館蔵
現在、姫路市立美術館では「日比野克彦展 明後日のアート」が開催中です。同館では「オール・ひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」(※1)として、今年から2024年まで毎年アーティストを招聘しプロジェクトを展開していきます。
本年度のゲストアーティストは日比野克彦さん。大学在学中から「段ボール」作品で脚光を浴び、国際的に活躍する現代美術作家で、2000年頃からは地域性とアートを結ぶ数々のプロジェクトに取り組むアートプロジェクトの第一人者でもあります。
本展では、1980年代から現在までの約200作品を展示。作家の軌跡を辿ります。

《SWEATY JACKET》(1982年 岐阜県美術館蔵)と日比野克彦さん
右/《AIR PORT》1981年 左/《WEDDING CAKE》1980年 どちらも岐阜県美術館蔵
壁に展示されているのは日本グラフィック大賞受賞(1982年)の平面作品3点
段ボールで作られたケーキやジャケット、日比野さんが注目されるきっかけとなる日本グラフィック大賞受賞(1982年)の3連作など80年代に制作された作品には瑞々しさが溢れています。
アートが哲学や演劇業界などジャンルを越えて行き来し始めたこの時を、日比野さんは「今日の多様な文化融合のはじまり」といいます。
会場風景

《部屋番号はいくつですか、とインターホンで聞いて下さい。》 1998年 作家蔵
90年代にはバブル崩壊や阪神淡路大震災など社会変動によって彼の意識は外から内へと向けられ、作品にも表れていきます。「作品は時代を映す」を実感します。
会場風景
会場風景
日比野さんは、2003年に朝顔の育成を通して人や地域性を促す「明後日朝顔プロジェクト」(各地で育てた朝顔の種を翌年には別の土地に植える)を本格的に始動し、現在も日本各地で取り組まれています。
会場には、収穫された種を描いた99枚の作品がずらり。圧巻です。1つ1つ形や色が異なり個性的。一括りにしてしまう朝顔の種のイメージが変わります。そして何よりも楽しい。
これらの作品からは、世の中に向ける日比野さんの視線を読み解くことができます。温かみと、物事の見方を少し変えてくれるような気づき。作品だけではなく、彼の数々のアートプロジェクトにも反映されていることを確信します。日比野さんを通して、人・場所・記憶が絡まるように繋がり、これからも広がっていくでしょう。私たちは明後日(未来)を向く力をもらいます。

美術館にも明後日朝顔プロジェクトの朝顔
来年3月31日まで、姫路市内では日比野さんによる6つのプロジェクト「明後日のアートの学校」が進行中です。ぜひ参加して、自分の中にある小さな種を育ててみてはいかがでしょうか。

今回のアートプロジェクトに関わった方々と日比野さん
姫路市立美術館
※1 海・島・山・森林・田園、姫路全域が有する地域文化をアートの力で市民ライフの糧として再発見するとともに、新たな姫路の魅力を国内外に発信するアートプロジェクト
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2021年9月16日 ]
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