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    レポート
    月岡芳年 妖怪百物語
    太田記念美術館 | 東京都
    芳年大特集、第一弾
    幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師、月岡芳年(1839-92)。幅広いジャンルを手掛けましたが、生涯に渡って力を注いだのが妖怪画でした。画業の初期に描いた「和漢百物語」と、最晩年に手がけた「新形三十六怪撰」を全点公開する展覧会が、太田記念美術館で開催中です。
    (左から)《新形三十六怪撰 老婆鬼腕を持去る図》明治22年(1889)4月12日印刷・5月20日出版 大屋書房蔵 / 《新形三十六怪撰 小町桜の精》明治22年(1889)10月7日印刷・10月10日出版 大屋書房蔵
    (左から)《新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図》明治25年(1892)印刷・出版 太田記念美術館蔵 / 《不知藪八幡之実怪》御届明治14年(1881)10月 太田記念美術館蔵
    (左から)《通俗西遊記 金角大王 孫悟空》元治2年(1865)2月改印 太田記念美術館蔵 / 《通俗西遊記 混世魔王 孫悟空》元治元年(1864)10月改印 太田記念美術館蔵
    (左から)《和漢百物語 鷺池平九郎》慶応元年(1865)9月改印 太田記念美術館蔵 / 《和漢百物語 不破伴作》慶応元年(1865)8月改印 太田記念美術館蔵
    (左から)《和漢百物語 酒呑童子》元治2年(1865)2月改印 太田記念美術館蔵 / 《和漢百物語 真柴大領久吉公》元治2年(1865)2月改印 太田記念美術館蔵
    《新容六怪撰 平清盛》明治15年(1882)5月 太田記念美術館蔵
    (左から)《奥州安達がはらひとつ家の図》御届明治18年(1885) 個人蔵 / 《袴垂保輔鬼童丸術競図》御届明治20年(1887) 太田記念美術館蔵 / 《平維茂戸隠山鬼女退治之図》御届明治20年(1887) 太田記念美術館蔵
    (左から)《新形三十六怪撰 さぎむすめ》明治22年(1889)4月10日印刷・4月15日出版 大屋書房蔵 / 《新形三十六怪撰 武田勝千代月夜に老狸を撃の図》明治22年(1889)4月10日印刷・4月26日出版 個人蔵
    (左から)《新形三十六怪撰 小早川隆景彦山ノ天狗問答之図》明治25年(1892)印刷・出版 太田記念美術館蔵 / 《新形三十六怪撰 やとるへき水も氷にとぢられて今宵の月は空にこそあり 宗祇》明治25年(1892)印刷・出版 大屋書房蔵
    歌川国芳の門下生である月岡芳年。師匠の国芳も妖怪画を得意としていましたが、芳年はそれ以上。歴史、伝説、小説、芝居などの怪奇的な物語を主題に、数多くの妖怪画を手掛けました。

    展覧会は「和漢百物語」と「新形三十六怪撰」を中心に、芳年が手掛けた妖怪画の世界を総覧する企画。まずは初期の妖怪画からです。

    数え12歳で国芳のもとへ入門した芳年。本格的にデビューした後も、当初は国芳の影響が顕著です。黒い背景から浮き出る妖怪の描写は、師の作品にも見られます。


    第1章「初期の妖怪画」

    第2章は「和漢百物語」。芳年が数え27歳の時に出版されました。芳年による妖怪を題材とした最初の揃物で、全26図。「和漢」とあるように、日本と中国の怪談がテーマです。

    時代は幕末とはいえ、まだ江戸時代(1865年/慶応元年)。若き日の芳年ならではの伸び伸びとした表現が見ものですが、後年に見られるような「芳年ならでは」という作風は、まだそれほど強く無いように思われます。


    第2章「和漢百物語」

    第3章は「円熟期の妖怪画」。明治になると浮世絵の世界も変革を余儀なくされますが、芳年は錦絵新聞、戦争画、美人画、歴史画など多彩な分野で活躍を続けます。

    この時期の作品として、よく知られているのが《奥州安達がはらひとつ家の図》。半裸の妊婦を逆さ吊りにして包丁を研ぐ老婆(妊婦は老婆の娘だったというオチもあります)というショッキングな作品は、しばしば芳年自身のイメージと重ねられますが、実際の芳年は賑やかな事が大好き。涙もろくて弟子の面倒見も良い、ごく普通の江戸っ子でした。


    第3章「円熟期の妖怪画」

    第4章が「新形三十六怪撰」。1889~92(明治22~25)年にかけて出版され、幾つかの図は芳年が没した後に刊行されたという、文字通り最晩年の作品です。

    後年の芳年は、線(特に衣服)に極端なメリハリが付き、独特のカクカクした描写に。一瞬を切り取った人物の表現は実は見事で、表情が見えにくいポーズからも感情が伝わってくるようです。


    第4章「新形三十六怪撰」

    実は芳年自身がたびたび幽霊を見たという逸話もあり、もともと並外れたデッサン力とデザイン性を兼ね備えた芳年が、自分で見たものを描いているわけですから、出来が悪いわけはありません。

    本展に続いて、9月1日からは「月岡芳年 月百姿」。2カ月続きの芳年大特集、芳年好きにとっては、たまらないシーズンが始まりました。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月28日 ]

    月岡芳年 妖怪百物語月岡芳年 妖怪百物語

    日野原 健司 (著), 渡邉晃 (著), 太田記念美術館 (監修)

    青幻舎
    ¥ 2,484


    ■月岡芳年 妖怪百物語 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年7月29日(土)~8月27日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
    料金
    一般 1,000円、大高生 700円、中学生以下 無料
    展覧会詳細 「月岡芳年 妖怪百物語」 詳細情報
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