画家・現代美術家の井田幸昌さんの初めての国内美術館での展覧会が京都市京セラ美術館で始まりました。国内未発表作品や、これまでの絵画・彫刻から最新作までが一堂に会します。
展示風景
《Maurice de Vlaminck》2023年 高校生の時にモーリス・ド・ブラマンクの作品を同館でみて画家を目指したという。
本展は、7つの部屋で構成されています。まずRoom1『肖像画を描く』。井田さんが今までに出会った人たちを描いた14点が並んでいます。近くで見ると抽象絵画かと思いますが、離れれば顔が浮かび上がる不思議な作品たち。人生において「relationships」を大切にしているという井田さんと人との関係性が意図されているのでしょうか。そして鑑賞者自身も、人との関わり方を自問自答してしまうようなオーラがあります。厚塗りの絵具、勢いのあるタッチ、そして部屋いっぱいに広がる絵具の匂い。井田さんと鑑賞者のグルーブが交差します。
《Blessing of the Sea》2022年
Room4「抽象画」の展示会場
Room4『抽象画』では空間そのものがインスタレーションで、線と多彩な色で「自然」が表現されています。自然光の入る部屋をぐるっと見渡して楽しんでください。
迫力のある作品
その部屋に展示されていた、寝かしたキャンバスに絵具が山のように盛った作品が印象に残りました。制作途中に絵具を削いだ積み重ねです。井田さんが過ごした時間と感情がレイヤーとなってそこにあるよう。「彫刻的でもある絵画作品」で「人間的」と井田さん自身が作品について話します。
《Last Supper》2022年 現代社会における《最後の晩餐》
作品の解説をする井田幸昌さんとキュレーターのジェローム・サンスさん
この作品からも、また会場全体を通しても、既定の枠を超えた想像力を持った作家であるとわかります。本展のキュレーター ジェローム・サンス氏は井田さんのことを「Japanese punk」であり「Everything’s available.」と言い、柔軟性、縦横無尽に挑戦をする彼のエネルギーを評価します。
Room5「End of today」展示風景
Room5は、井田さんが約10年つづけている「End of today」シリーズ300作品が展示されています。風景や出会う人々を描いた作品は日記のようで、彼の人生の断片が散りばめられている空間になっています。黄色の壁がダイナミックなRoom3『具象絵画』や、荒々しく削られ、大胆に彩色された10体の木彫彫刻が並ぶRoom6『木彫彫刻』など、どの部屋もそれぞれに見応えがあります。そして7つの部屋は呼応し合い、井田さんの世界をみせてくれるのです。
《Self Portrait》とタイトルされた木彫彫刻
これから彼はどんな作品をつくっていくのだろう、いや、どんな人や物に出会い、どんな景色を私たちにみせてくれるのか。私たちが見失うほどに自由に飛び回ってほしい、そう願います。
ミュージアムショップもインパクトのある空間
京都市京セラ美術館外観
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2023年9月29日 ]
読者レポーター募集中!あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?