急に知名度が上がったように思える若冲ですが、実は生前から名高い存在。18世紀の京都画壇では、円山応挙についで名があがるほどでした(池大雅と与謝蕪村は若冲より下です)。
名声は明治時代になっても衰えず、《動植綵絵》は宮内省に献納されたほど。ただ、若冲を代表する逸品が一般の目から遠ざかった事で、次第に忘れられた存在へ、というのが現代までの評価の流れです。
展覧会では初期から晩年まで89点(50作品)を紹介。83年ぶりに発見されて話題になった《孔雀鳳凰図》、漆黒の背景が特徴的な《花鳥版画》など、いずれも名作ばかりです。
展示室・ロビーフロア展覧会最大の注目《釈迦三尊像》と《動植綵絵》は、同じ展示室で紹介されています。
ともに若冲自らが、自身や家族の供養のために京都・相国寺に寄贈したもの。相国寺で行われていた法要に倣って《釈迦三尊像》3幅を正面中央に、左右に《動植綵絵》を15幅ずつが掲げられました。
描かれているのは鶏をはじめ、虫や魚、園芸植物などバラエティ豊か。嬉しい事に展示ケースは浅めなので、かなり近寄っての鑑賞が可能です。
即興的な水墨画にも味わい深い作品が多い若冲ですが、やはりこの繊細さこそ若冲の真骨頂。濃密な世界を堪能してください。
展示室・1階 《釈迦三尊像》と《動植綵絵》会場の後半には、米国のコレクターが収集した若冲作品を展示。メトロポリタン美術館、デンバー美術館、そして若冲のコレクションでは名高いエツコ&ジョー・プライス夫妻の所蔵作品が、一堂に会します。
モザイク画のような「桝目描き」で描かれた《鳥獣花木図屏風》は、プライスコレクション。桝目描きの若冲作品は3点確認されていますが、これは若冲の最晩年に描かれたと推測されています。鮮やかな色彩と高いデザイン性は、何度見てもうっとりします。
展示室・2階「忘れられた画家」とされていた若冲ですが、自身は「千載具眼の徒を竢つ」(千年後に自分の絵を分かる人が現れる)と語っていました。今年は若冲生誕300年・没後なら200年強。実は予定より5倍のスピードで大ブレークを果たしたともいえます。
展覧会の会期はわずか1カ月。東京だけの開催で、他館への巡回はありません。おそらく、この規模の若冲展は今後も難しいと思われます。ツイッターなどで混雑状況を確認しつつ、足をお運びください。
※5月10日(火)から一部展示作品が入れ替わります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年4月21日 ]■生誕300年記念 若冲展 に関するツイート