箱根の
ポーラ美術館のモネ作品は19作品、国内最大を誇ります。上野の
国立西洋美術館は17作品を所蔵。松方幸次郎がモネ本人からジヴェルニーで譲り受けた作品を含み、大変良質なコレクションです。
今回はモネを中心に、両館の印象派など西洋絵画コレクションを合わせて、モネがどのような視点で風景を描いたのかを、5つのセクションで展観していきます。
セクションはほぼ時系列の章立てとなっており、モネがそれぞれの時代にどんな影響を受け、それを作品にどう反映させていったのか、わかりやすく見ていくことが出来ます。
会場風景まず会場に入ると出迎えてくれる作品が、今回ポスターなどに使用されている2作品です。ちなみに、こちらは展示構成では4章に分類される作品です。
描かれた2名の女性のモデルは2作品とも共通しており、後にモネと結婚するアリスの娘たちです。《舟遊び》では水面に映る陰影を丹念に描いていますが、その3年後に描かれた《バラ色のボート》では水の中の水草がゆらめく様子が、びっしりと描き込まれた曲線で表現されています。
クロード・モネ《バラ色のボート》《舟遊び》第2章の「光のマティエール」には、スーラとモネの作品が並びます。二つとも海辺のヨットを描いており、制作時期もほぼ同時期ですが、かなり異なる印象。
モネは空、海、岩肌、それぞれに太陽の光がもたらす色の揺らめきを異なった筆触で描いています。一方、点描で均一な光を描くスーラの作品は時が止まったような印象。計算しつくされた構図をアトリエで時間をかけて描くスーラは、その場で作品を描くモネとは大変対照的です。
ジョルジュ・スーラ《グランカンの干潮》 クロード・モネ《エトルタの夕焼け》モネの代表作、睡蓮の連作は4章の「空間の深みへ」で、2作品が展示されています。
1つは連作の初期1899年に描かれた《睡蓮の池》。庭の風景と睡蓮、そして水面に映る柳の影、差し込む柔らかな光などが細かな筆触で描かれています。
しかし、1907年作の《睡蓮》ではモネの視点は水面にクローズアップされ、周囲の風景は水面に映る緑の影だけで表現されるのみ。モネの視点はどんどん水に引き寄せられていくのがわかります。
また、今回は展示されていませんが、
国立西洋美術館収蔵の1916年作の《睡蓮》ではモネの視点はさらに水の深い位置へ移っていきます。こちらは
国立西洋美術館での展示で是非ご覧ください。
クロード・モネ《睡蓮の池》また、今回はレオナール・フジタの未発表作品を含む3点が新収蔵され、初公開されています。最初期の貴重なキュビスム風の静物画と、寓話や神話などの幻想的なモチーフを描いた2作品です。
ポーラ美術館は日本最多のフジタコレクションを有しており、収蔵作品数は全175点。ちなみに東京では8月25日から
Bunkamuraザ・ミュージアムで
ポーラ美術館のフジタコレクションの展覧会が開催されます。
会場内にはモネを中心とした印象派の作品が一堂に会しとても華やか。
ポーラ美術館、
国立西洋美術館の共同コレクション展なので、いずれか1つでも常設をご覧になった方には見覚えのある作品も多いはずですが、展示空間や隣に並ぶ作品が変わると新鮮に見えてきます。
ポーラ美術館では11月24日(日)まで開催、その後
国立西洋美術館で12月7日(土)~2014年3月9日(日)まで開催されます。(展示作品が一部変わります)
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2013年7月17日 ]