戦前・戦後の映画の黄金期に1,000枚を超えるヨーロッパ映画のポスターを制作した映画ポスターの第一人者、野口久光。映画イメージに合った手書きの文字と臨場感にあふれた俳優の表現で、映画ポスターを芸術的なレベルに昇華させました。
会場会場のうらわ美術館では、これまでも何回かポスターを展示した展覧会を開催していますが、ここまで大量のポスター展は初めて。壁面にずらりと掲げられたポスターは圧巻です。
「天井桟敷の人々」「禁じられた遊び」など一部の作品は、フランス版のオリジナルポスターも展示。オリジナルも味があるデザインではありますが、比較してみると野口版の躍動感が印象に残ります。
「天井桟敷の人々」「第三の男」など野口ポスターの代表作ともいえるのが、ヌーヴェルバーグの雄、フランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」。
野口が描いたこの日本版ポスターをトリュフォーは大変気に入って、野口に直接手紙を送ったほか、後の作品にもこのポスターを小道具として使いました。
1990年にはトリュフォーの追悼本がフランスで刊行されましたが、その表紙を飾ったのもこのポスターのデザインでした。
代表作の「大人は判ってくれない」など野口の巧みさは、やはり人物の表現。会場後半には多くのスケッチも展示されています。
顔かたちだけでなく、俳優がもっているイメージも的確に表現。写真以上に本人らしく感じられます。
俳優のスケッチ西宮市大谷記念美術館から巡回してきた本展。映画ファンはもちろん、グラフィックデザイン分野の方にも見ていただきたい展覧会です。
観覧済の有料チケットを提示すると、次回は団体料金で観覧できる嬉しい「リピーター割引」は、1年間有効です。(取材:2012年5月17日)