1982年開館の大阪市立東洋陶磁美術館(MOCO=モコ)が約2年の改修工事を終えてリニューアルオープンしました。まずは珠玉のコレクションが一堂に会す会場へ出かけました。大阪中之島は川沿いの中洲を形成し、大阪市中央公会堂や市役所、図書館、日本銀行など文化とビジネスの拠点と憩いの公園を備える地区です。
土佐堀川にかかる難波橋からの風景 川向うの左端、茶色い建物が東洋陶磁美術館
コレクションは住友グループから寄贈された世界に誇る「安宅コレクション」の中国・韓国陶磁と「李秉昌(イ・ビョンチャン)コレクション」の韓国陶磁を中心に、関連分野など国宝2件、重要文化財13件を含む東洋陶磁の名品が連なります。
今回は13の展示構成にそれぞれのタイトルがつき、大変豪華なラインナップです。トップバッターの「天下無敵-ザ・ベストMOCOコレクション」では各時代から選りすぐりの青磁や白磁の逸品が登場。艶やかにしっとりと輝きを放つ表面の質感や深みのある彩色には長い時間を超えてきたとは思えない美しさがあります。
法花花鳥文壺 明時代 安宅コレクション など展示風景
左)青磁象嵌雲鶴文梅瓶 右)青磁象嵌竹鶴文梅瓶 いずれも 高麗時代 安宅コレクション
一方、青花の顔料が不足する時代にはどっしりと厚みのある壺などに鉄砂で自由なタッチで描かれた素朴な作品が見られます。中でも動物や鳥、草花の図柄はなんとなく愛らしい表情をしています。この虎、お目目パッチリでしょう?
左)鉄砂虎鷺文壺 安宅コレクション 右)鉄砂虎鹿文壺 安宅英一氏寄贈 いずれも朝鮮時代
そしてこの度、美術館のキャラクターに選ばれて来館者を丁寧にエスコートしてくれるのはこちらの壺に描かれた“虎”さんです。スリムなお姿としなやかな曲線の尻尾に私は2021年8月の展覧会でお目にかかって以来“猫”だと思っておりましたがタイトルを見れば確かに“虎”です。名前はMOCOちゃんだそうです。
青花虎鵲文壺 朝鮮時代 安宅コレクション と新キャラクターの説明文
もちろん日本の陶磁コレクションも充実しています。奈良時代の三彩の壺から瀬戸、美濃、唐津そして有田や古清水など日本国中の窯から逸品が大集合しています。各地の特色を生かし、こだわりを持って文化を継承してきた窯と土との格闘が創り出した陶芸は、海を渡って絶賛されました。この有田窯の柿右衛門様式の相撲人形は、乳白色の肌や表情が生き生きと見え、優美な装飾も残っています。
色絵相撲人形(二組)江戸時代 肥前・有田窯(柿右衛門様式)
李秉昌博士からの寄贈コレクションは美を堪能できる空間です。ちょっと面白いなと感じたものは筆筒や筆洗など文房具類の展示です。朝鮮時代のもののようですが、文字や絵を描く小さな道具にも透かし彫りや絵付けが美しく、大切にされてきたことが伺えます。この隣には化粧道具類も並び、どんな風に使ったのだろうと思いながら拝見しました。
青花辰砂透彫蓮唐草文筆筒 朝鮮時代 李秉昌博士寄贈(写真右)
唐時代の墓に副葬された人形である「加彩婦女俑」はふくよかなお姿。“MOCOのビーナス”と呼ばれているそうです。左手には小鳥が止まっていたらしく、さえずりに耳を傾けていたのでしょうか、とても楽しそうです。回転させた展示なので後ろ姿も見ることができ、愛らしさがよく伝わります。
加彩婦女俑 唐時代 安宅コレクション
そしてこちらが国宝、油滴天目茶碗です。スポット照明や高透過ガラスを用いた専用の展示ケースが設置され、360度ぐるりと鑑賞できます。また、映像ルームではこの国宝を手に取ったように体感できるデジタルプログラムが大きな魅力として加わりました。茶碗の厚みや重さを感じながら好きな角度にして見ることができます。
国宝 油滴天目茶碗 南宋時代 展示風景
体感!国宝油滴天目茶碗の体験様子
リニューアルにより、解放感あるエントランスやミュージアムショップが充実しました。中之島の風景に溶け込んだガラス張りのカフェではオリジナルのメニューを味わうこともできるそうです。青葉が風に揺れる都会のお散歩で、是非美術館にお立ち寄りください。
赤レンガの大阪市中央公会堂を見ながら利用できるくつろぎのカフェスペース
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2024年4月11日 ]