身の回りのものをコラージュ的に繋げながら、新しい形象や風景をつくる美術家、金氏徹平(1978-)。いま、最も活躍が著しいアーティストのひとりです。
新作や日本初公開の作品を含めた約100点で、金氏の世界を紹介する展覧会が、市原湖畔美術館で開催中です。
市原湖畔美術館「金氏徹平 S.F. (Something FallingFloating)」会場入口
金氏は京都府生まれ。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに学び、京都市立芸術大学大学院では彫刻専攻修了。横浜美術館や丸亀市猪熊弦一郎現代美術館などでも個展を開催するなど、精力的に活動しています。
近年は文学や演劇など領域を横断するように活躍の場を広げていましたが、コロナ禍で人と繋がることが難しくなったこともあり、今回は原点に回帰。彫刻家として、ものそのものに向き合いました。
市原湖畔美術館「金氏徹平 S.F. (Something FallingFloating)」会場
作品はモノトーン基調のものが目立ちますが、会場は照明が劇的に変化し、にぎやかな色彩に包まれます。
演出は、大地の芸術祭(2018年)でもタッグを組んだ照明デザイナーの髙田政義。足をとめて、その変化をお楽しみください。
市原湖畔美術館「金氏徹平 S.F. (Something FallingFloating)」会場
金氏はこれまでの展覧会でも「Smoke and Fog」「Splash and Flake」など、さまざまな「S」と「F」を組み合わせてきました。
今回の展覧会は「Something(何か)」と「Falling(落下) / Floating(浮揚)」。「自然」と「人為」の関係性を問いかけていきます。
市原湖畔美術館「金氏徹平 S.F. (Something FallingFloating)」会場
今回の展覧会にあたり、金氏は市原市内を巡って使用済みのコンクリートや石などを収集し、それらをコラージュした作品を制作しました。
美術館の大きな吹き抜け壁面にも、さまざまなものが積み重ねられています。塔のようにも見える、新たなイメージが屹立しています。
(奥の壁面)《Gray Puddle #20》2022
水の流れを使った作品をのぞくと静謐な会場の中で、驚かされたのがこの作品です。鑑賞していると、突然、煙が出てきました。
煙が出る前には特に予兆もありません。いつも出ているわけではないので、煙が出るところを見れた方はラッキーともいえるかもしれません。
《Smoke and Fog(マテリアルのユーレイ)#47》2022
自然と人工の間にある物から新しいイメージをつくり出していく金氏。会場の市原湖畔美術館が隣接する高滝湖も、ダムによって生まれた人造湖ですが、周辺には美しい自然環境が広がります。
市原湖畔美術館の独特の空間で、金氏ならではの世界観を楽しめる展覧会。高滝湖の散策も兼ねて、天気が良い日にお越しください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年5月28日 ]