豊かな感性から生み出される作品で、生前は日本画壇を牽引した加山又造。2004年に死去した後、没後5年にあたる2009年に国立新美術館で大回顧展が開催されましたが、本展はそれ以来となる大型展です。
1章は「動物 ─ 西欧との対峙」。東京美術学校(現東京芸術大学)で学んでいた加山は、上野動物園での写生で研鑽。デビューした50~60年代には動物をモチーフにした実験的な作品を描いています。
2章は「伝統の発見」。60年代半ば頃から伝統的な様式美・装飾美を意識した作品が増えた加山。国際化が進む中で、逆に日本固有の美意識への関心が高まりつつあった時代の波を掴み、徐々に飛躍していきます。
1章「動物 ─ 西欧との対峙」、2章「伝統の発見」3章は「生命賛歌」。さまざまな動物画を描いた加山。なかでも猫はお気に入りだったようで、何点も猫の絵を残しています。変わったところでは「野鳥の会」の会報の表紙絵。多様な鳥の姿を、デザイン性豊かに描きました。
目を引く大作が、裸婦を描いた四曲一双の屏風《はなびら》。大胆なポーズで、強いエロティシズムを感じさせます。加山は1970年代から裸婦を手掛けていますが、この作品は1986年の作品です。
3章「生命賛歌」4章は「伝統への回帰」。1970年代後半からは、水墨画の大作にも挑戦。1978年には中国・黄山への訪問を果たし、北宋画に倣った作品を手掛けます。琳派風の表現にもさらに磨きがかかり、鋭い感性から数多くの名作が生まれました。
4章「伝統への回帰」日本画家としての活動が有名な加山ですが、陶器や着物の絵付けなども行っています。会場では、加山のトレードマークともいえる千羽鶴をあしらった大鉢や留袖、牡丹を配した大鉢や振袖などを紹介。振袖をよく見ると、牡丹は着物に直接描かれている事も分かります。
5章「工芸」加山が東京美術学校を卒業したのは1949年。戦後の混乱の中、日本画が存在する意義さえ危ぶまれる時代でしたが、加山ならではの独特のセンスと、時代を読み取る嗅覚を合致させて、人々の心を掴む作品を世に送り出していきました。
存命中は間違いなく頂点の一角を占めていた加山又造。まとまった作品展が久しぶりとは、逆に意外にも思えます。残念ながら百貨店なので会期は短めですが、夜は連日19:30までOKです(最終日は18時まで、ともに来場は30分前まで)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年2月21日 ]■生誕90年 加山又造展 に関するツイート