ルーヴルの全部門が積極的に参画した本展。異例ともいえる試みは、今春ルーヴル美術館の館長に就任したジャン=リュック・マルティネズ氏の監修により実現しました。
ルーヴル美術館が総力をあげて作ったといえる豪華な展覧会は、ほぼ年代どおりの流れで進みます。
序章 地中海世界
―自然と文化の枠組み―
1章 地中海の始まり
―紀元前2000年紀から前1000年紀までの交流―
2章 統合された地中海
―ギリシア、カルタゴ、ローマ―
3章 中世の地中海
―十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)
4章 地中海の近代
―ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)
5章 地中海紀行(1750-1850年)
会場「地中海」がテーマなので、作品は約4200年前に作られた黄金の器から19世紀の油彩画まで膨大。さまざまな交流によって生み出された地中海文化を俯瞰していきます。
1階に上がって(東京都美術館の企画展示室は地下1階→1階→2階と進みます)目に入るのは、逞しい大理石の彫像。
紀元前30年頃のもので、おそらくオクタヴィィアヌス(後の皇帝アウグストゥス)の像。クレオパトラを滅ぼして地中海世界を統一、ローマ帝国の初代皇帝となりました。
《ローマ将軍の英雄的な像:おそらくオクタウィアヌス(後の皇帝アウグストゥス)》展覧会の目玉は《アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神 通称「ギャビーのディアナ」》。18世紀にローマ近郊のギャビーで発掘され、1808年にルーヴルに収蔵されて以来、初めて館外に出され、もちろん日本初公開です。
穏やかな表情と、流れるような布の表現。ポスターでは正面からの写真で紹介されていますが、会場では背後に回って見ることもできるため、マントを摘んでいる指先までじっくり楽しめます。
《アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神 通称「ギャビーのディアナ」》大理石彫刻ばかりをご紹介しましたが、絵画も数多くの優品が出展されています。
オリエンタリズムあふれる絵画で知られるテオドール・シャセリオーは《モロッコの踊り子たち:薄布の踊り》と《バルコニーにいるアルジェのユダヤ女性たち》の2点。
カミーユ・コローの《ハイディ:ギリシアの若い娘、イギリスの詩人バイロン卿(1788-1824 年)による『ドン・ジュアン』の登場人物》は、抒情性豊かな人物画です。
絵画の展示も充実注目の大規模展ながら、巡回せずに
東京都美術館だけでの開催です。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年7月19日 ] | | ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて
ヴァンサン・ポマレッド (著, 編集), エリック・レッシング (著), アンリ・ロワレット (著), アーニャ・グレーベ (著) 平凡社 ¥ 9,030 |