会場構成は【過去】【現在】【未来】の3ゾーン。日本科学未来館での展覧会という事もあり、生命科学の未来も視野に入れた構成です。
【過去】は「マンモス、太古の記憶」。冒頭の《仔ケナガマンモス「ディーマ」》は、1977年に永久凍土から発掘されました。
マンモスは、現在のゾウと同じ長鼻類ゾウ科の動物。ゾウの直接の祖先ではありませんが、おなじ祖先を持つ親戚になります。耳が大きくないのは、寒さに耐えるためとされています。
自然界最強の動物であるマンモスにとって、初めて現れた敵が人間です。近年は武器が刺さったマンモスの骨も見つかっています。
【現在】のゾーンは「永久凍土で待つもの」。皮肉にも、近年の気候変動の影響で、永久凍土から状態が良いマンモスが次々に見つかっています。
しばしば勘違いされますが、永久凍土は「氷」ではなく「土」。0度以下の状態が2年以上続いている土や地盤を示します。
永久凍土は、いわば強力な冷凍保存庫。腐敗の原因になる湿気が凍り付くため、皮膚などの体組織が何万年も残るのです。
世界初公開となる《ケナガマンモスの鼻》は、3万2700年前のもの。ゾウと同様にマンモスの鼻にも骨が無いため、これほどしっかりした鼻が見つかる事はめったにありません。
2018年に見つかった《仔ウマ「フジ」》は、4万2000年前ながら外部損傷が無く、世界唯一の「完全な太古の仔ウマの遺骸」。解剖調査で「液体の血と尿」の採取にも成功、古生物学史上初の快挙となりました。
【未来】のゾーンは「その「生命」は蘇るのか」。生命科学技術の発展は、驚くべき成果を上げつつあります。
近畿大学では1996年から「マンモス復活プロジェクト」を実施。状態が良いマンモスが発見された事で研究は加速し、卵子の中でマンモスの細胞核が動き出す段階まで到達しています。
展覧会最大の目玉である《「ユカギルマンモス」》は、会場の一番最後に登場します。
2002年に見つかったマンモスで、頭部の骨のほぼ全てに加え、毛を含む軟体部が残っているという超貴重な資料。2005年の愛・地球博で展示された際には、なんと700万人が見ました。
学術面は第一線の研究者が支えていますが、いとうせいこうさんが展示構成を監修している事もあり、とても分かりやすい展覧会です。オフィシャルプログラムも、ほぼB4ぐらいのマンモスサイズです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年6月6日 ]