森山大道は大阪生まれ。商業デザイナーとしてスタートし、後に写真家に。「カメラ毎日」に発表した『にっぽん劇場』シリーズなどで1967年に日本写真批評家協会新人賞を受賞。注目を集める事となります。

(左壁面)『Lips』より / (右奥)『写真よさようなら』より

(左)『にっぽん劇場写真帖』より / (右)『スキャンダラス』より
評価を確立させたのが「アレ・ブレ・ボケ」と呼ばれる写真です。粒子が粗く、手ブレがあり、ピンボケという、それまでの正しいとされてきた写真の常識を覆す作品でした。
岩宮武二と細江英公に写真を学んだ森山。確かな技術を持ちながら、意図的に制作したこれらの作品は、60年代の空気にも後押しされて、大きな反響を呼びました。
森山の活動は国際的にも評価を集め、サンフランシスコ近代美術館、ニューヨーク近代美術館、カルティエ財団現代美術館など、大規模な個展を海外で何度も開催。ハッセルブラッド国際写真賞をはじめ、数々の国際的写真賞も受賞してます。

(左3点)『スキャンダラス』より / (右奥1点)『にっぽん劇場写真帖』より
森山はデビュー当時から現在まで、一貫してスナップショットだけを撮影しています。現在はデジタルのコンパクトカメラを手に路上に繰り出し、繁華街や商店街などで撮影。スナップを撮る写真家は数多くいますが、スナップショットだけをこれだけ集中して撮り続けている写真家は、あまり多くありません。
今回の展覧会は、最近作が中心。主に東京で撮影された写真です。

会場
広い展示室には、壁面いっぱいの3段掛けで、手前がモノクロ、奥にカラー写真。廃墟のような建物、ショーウインドーのマネキン、落書きだらけの看板、蛍光色のラブホテルなど、エネルギッシュなイメージが広がります。

ongoing より

ongoing より

ongoing より
展示台の写真は『記録』シリーズ。テーマとは関係なく森山が日常きままにスナップしたものからセレクトされています。会期中にも展示替えが予定されています。

(奥壁面)ongoing より / (手前)『記録』より
最後の小部屋は『Tights』シリーズです。液晶モニターに投影される、網タイツの写真。暗い展示室はエロティックでグラフィカルな空間が広がっています。

『Tights』より
会場の東京都写真美術館では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、各種の対策を実施中です。入館時には体温測定があり、マスクは必須。エレベータも4名に制限しているので、階段利用にご協力ください。皆が気持ちよく鑑賞できるために、必ずお出かけ前に公式サイトもご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月3日 ]