大聖寺藩は、寛永16年(1639)、加賀藩3代藩主前田利常が三男利治(としはる)に7万石を分与したことで誕生した加賀藩の支藩です。歴代藩主の中で最も能好きであったのが最後の藩主・14代前田利鬯(としか)でした。利鬯は加賀藩13代藩主前田斉泰(なりやす)の七男として生まれ、安政2年(1855)に大聖寺藩主となります。父、斉泰も大変な能好きで、金沢の能楽が最も華やいだ時代でしたが、子の利鬯もまた宝生流二百十番の詞章を全てそらんじていたと伝えられるほど能芸に優れていました。
この利鬯ゆかりの能面と能装束を今に伝えている一つに江沼神社(加賀市)があります。江沼神社は旧大聖寺藩藩邸の敷地内にあり、前田家の遠祖菅原道真と藩祖利治を祭神として祀っています。かつては境内に能舞台があり利鬯も能を演じたといわれ、利鬯が奉納した能装束をはじめ多数の能面・能装束を所蔵しています。利鬯が奉納した能装束は、藩祖利治が父利常より分藩の際に譲られたものと伝えられており、本展では、これら江沼神社に伝わる能面と能装束をご紹介します。ぜひご来館ください。