美術作家・今村遼佑と全盲の美術作家・光島貴之による、作品展示と感覚をめぐるリサーチの記録を報告する展覧会を開催します。
世代も制作スタイルも異なる二人は、2022年頃より対話をはじめ、共通の体験を糸口に個々の美術作家としての感覚の違いに注目して、そこから生まれる新たな表現を探ってきました。本展では、3つの展示室に広がる今村のインスタレーション作品や、手でふれることのできる光島のレリーフ状の作品など、鑑賞者が直感的に楽しむことのできる展示の他、二人が共同制作した作品《触覚のテーブル》を用いたワークショップなど、ゲストを招いた参加型のプログラムを行います。
わたしたちは、外的な刺激をうけて自身の内側の変化を感じること、すなわち「感覚」を通して、他者の感じている世界にふれることができます。本展では、ひとりひとり異なる感覚を、数学の問題に用いられる「任意の点P」になぞらえ、わたしの/誰かの〈感覚の点P〉を通して、多様な世界の在り方にふれてみたいと思います。
<展覧会の見どころ>
① さわれる展示
この展覧会では、さわることのできる作品が多数展示されます。今村遼佑のインスタレーション作品《プリぺアド・トイピアノ》は、鑑賞者がおもちゃのピアノにふれると、鍵盤の数と同じ32個の仕掛けが3つの展示室のどこかで動きます。光島貴之のレリーフ状の作品《さやかに色点字 ― 中原中也の詩集より》は、釘やカッティングシートなど、手ざわりの異なる多様な素材の組み合わせにふれることで、鑑賞者は、光島の感じた世界をたどります。
② ユニークなリサーチの報告
二人のリサーチは、2022年に石庭を眺めることから始まり、見える人もしくは見えない人のように、二項対立構造的な説明では表現できない複雑さで、周囲の人へと協働の輪を広げながら進んできました。その内容は、野外彫刻や森の木にふれる、点訳本(点字図書)について考察する、光島の感覚をたどりながら近所を歩く、スルーネットピンポン(誰もが同じルールでプレーできるバリアフリースポーツ)をするなど、多岐に渡ります。本展では、10件を超えるリサーチの記録を一堂に展示・報告します。
③ 参加型プログラムを多数開催
作家が特別ゲストと共にファシリテーションする《触覚のテーブル》*ワークショップの他、《プリペアド・トイピアノ》の演奏会(出演:野村誠 2025年2月16日(日)開催予定)、スルーネットピンポン体験会、鑑賞会(ナビゲーター:白鳥建二)など、本展では複数の関連イベントを実施します。 ※詳細は、当ギャラリーのウェブサイトにて随時公開。
*《触覚のテーブル》は、会期中、自由にふれてご覧いただけます。