ボクは、この人生で、うれしいことや悲しいこと、ほっとすること等、たくさん味わって、
それをこう、何かユーモラスで味わいのある絵としてこれからも描いてゆきたいな。と、
そんな風に思っています。 ―――涌嶋克己
今年 15 周年を迎えたBBプラザ美術館では、2010 年に「震災から 15 年、神戸を想う」展と題し、
須田剋太氏が震災前の神戸風景を描いた『街道をゆく』挿絵原画と吉見敏治氏が震災後に被災地で
描いた記録画を紹介いたしました。
2015 年には、先の東日本大震災も含め、震災の記憶をどのように受けとめ、考えていけばよいかと
いう問いを「震災から 20 年 震災 記憶 美術」と銘打った展覧会で試みました。
同企画は、榎忠、西田眞人、堀尾貞治ら 13 人と 1 グループの作家らが、震災という現実と真摯に向
き合い、平面、立体、インスタレーションなどによる表現で制作した作品を通して、震災の記憶を
追体験し、これからの私たちと美術の在り方を共々に探ろうとするものでした。
そして、このたび当館では、2025 年 1 月 17 日に震災から 30 年を迎えるにあたり、神戸にある美術
館として発信する機会をいただくならば、見に来てくださる方の心に寄り添うような、人と人が深
く想い合える展覧会を開催したいと企画しました。
震災の記憶や其々が抱える気持ちを、おおらかに、やさしく、強く、包み込む展覧会にと思い浮か
べたとき、地元神戸を拠点に自身の信念を持ってまっすぐな心で絵を描き、人と社会にやさしさや
元気を与える創作活動を続けている涌嶋克己(通称 WAKKUN)さんとご一緒に取り組んでみたい
と考えました。
震災を含む私たちが出合う様々な困難は、悲しいことや辛いことばかりでなく、生きていることを
実感し、時に目に見えない大切なことに気づかせてくれます。
それは WAKKUN が、制作姿勢においてずっと核にしてこられた、人との出会いを大切にし、人生
を味わうことで展開していく多彩な表現活動に共通しています。
本展がご来場くださる皆様と共に、いま生きていることや人とのつながり、その喜びを実感できる
場になればと願っています。