第6回 松村円(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 学芸員)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の松村です。当館は1991年に猪熊弦一郎の協力を得て香川県丸亀市に開館し、今年はちょうど開館30周年にあたります。猪熊からは20,000点を超える作品のほか、書簡や書籍、自身が撮影した8ミリフィルムや写真など多くの資料が寄贈されており、所蔵する作品や資料を活用して猪熊を多角的に紹介する常設展をおこなっています。また、記念館ではなく、常に新しいものを積極的に紹介する美術館であってほしいという猪熊の考えに基づき、猪熊弦一郎展以外にも現代美術を中心とした企画展を開催しています。
「美術館は心の病院」とは猪熊の言葉ですが、当館を訪れた人が、この空間に身を置いて作品を見ることで、新鮮な刺激を受け、未来へ向かって進んでいける場となるために、猪熊作品や現代美術の作品がもつ力を伝えられるよう日々探求しています。現在は、2022年度に新しく始めることとなった公募展「ミモカアイ」の準備を進めています。
「猪熊弦一郎展 アートはバイタミン」展示風景 / 吉村順三設計「田園調布の家」1971年 1/1模型 ©ホンマタカシ
私のおすすめミュージアム
鹿児島市立美術館
おすすめしたい美術館は「鹿児島市立美術館」です。なかでも今回は所蔵品の展示についてご紹介してみたいと思います。
鹿児島市立美術館では、地域に着目しつつ国内外の美術をバランス良く収集した所蔵作品群から選ばれた名作ぞろいの作品が、常設展示室に惜しみなく展示されており、時間を忘れて見入ってしまいます。また、展示室を出たスペースでは彫刻や、薩摩焼・薩摩切子といった鹿児島の特色ある所蔵品を見ることができ、楽しめる空間になっています。
ところで移動が難しい状況が続く今、各地域にある美術館がこれまで以上に大きな役割を持ちつつあるのではないでしょうか。作品そのものの魅力もさることながら、じっくりと鑑賞できる所蔵品展に特集展示を設け、さらに所蔵作品から様々なテーマを見出し、掘り下げて紹介する小企画展といった展覧会の組み立てにも学ぶべきことが多くあります。
四国から九州まで、私にとって気軽に行ける距離ではありませんが、とても居心地が良く、何度も訪れたいと思わせられる美術館です。
鹿児島市立美術館 外観
鹿児島市立美術館 展示室