エル・グレコ「羊飼いの礼拝」展示風景
街の樹々が色づき、秋が深まって、まさに芸術の秋を楽しむ季節です。猛威を振るったコロナも収まった今こそ、心置きなく、芸術を謳歌しましょう。
大阪市立美術館では、「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」が開かれています。美術好きだけでなく、多くの人が楽しめる傑作が目白押しです。
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」の推しポイント!
メトロポリタン美術館は、ニューヨークにある世界最大級の美術館です。こちらの特徴は、コレクションの幅がとても広いことで、収蔵品はなんと150万点余に及びます。
今回の展覧会では、ヨーロッパ絵画部門2500点の中から、選りすぐりの65点が出展されます。そのうち、46点は日本初公開ですから、見逃すわけにはいきません。
展覧会のメインビジュアルのカラヴァッジョの「音楽家たち」も、日本初公開のうちの1点です。
カラヴァッジョ「音楽家たち」の展示風景
さらに、サブタイトル「西洋絵画の500年」が示すように、ルネサンスから19世紀までの西洋絵画史を、巨匠たちの作品を通し、網羅的に味わうことができます。
3章仕立ての構成は、とてもわかりやすいです。
「Ⅰ 信仰とルネサンス」はここに注目!
日本初公開の作品が目白押しです。「ゲッセマネの祈り」は、ルネサンスの巨匠ラファエロの20~21歳ごろの作品です。円熟のラファエロとは趣の異なる若きラファエロを感じてください。
ラファエロ・サンツィオ「ゲッセマネの祈り」の展示風景
初期ルネサンスのイタリアを代表するフラ・アンジェリコの「キリストの磔刑」では、彼の一点透視図法によって空間の奥行きを感じられます。三次元空間を表現した最初の画家の一人だと言われています。今では当たり前のことですが、そのパイオニア的意義は大きいです。
フラ・アンジェリコ「キリストの磔刑」の展示風景
圧巻の「Ⅱ 絶対主義と啓蒙主義の時代」
ルネサンス期のイタリアの画家が多く描いている「古代ローマの女神フローラ」を17世紀オランダの巨匠レンブラントが描いています。レンブラントの「フローラ」は、「レンブラントのフローラ」以外のなにものでもありません。
レンブラント・ファン・レイン「フローラ」の展示風景
マリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)」は、長い間、ジャック=ルイ・ダヴィッドが作者だと考えられていました。
1996年、研究によって、マリー・ドニーズ・ヴィレールの作品だということがわかりました。社会的制約を受けながら、活躍した女性画家の作品に脚光があたることを願わずにおれません。
マリー・ドニ―ス・ヴィール「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニ(1868年没)」の風景展示
「Ⅲ 革命と人々のための芸術」を堪能!
19世紀ヨーロッパは、近代化に伴う激動の時代でした。芸術、絵画も、その波と無縁ではいられませんでした。
印象派の中で、ルノワールは、肖像画を多く描きました。彼が描く「若くふくよかな女性」には、安定のやすらぎさえ感じ取れます。
オーギュスト・ルノワール「ヒナギクを持つ少女」「海辺にて」の展示風景
シスレーが描く夏の青空に浮かぶ白い雲と川に架かる橋や建物は、あくまで明るく、絵に描かれた風景を吹く風さえも感じられる心地よさです。わかりやすく、大好きです。
アルフレッド・シスレー「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋」の展示風景
ドガといえば、誰もが「踊り子」の絵を思い浮かべます。踊り子の一瞬やふとしたしぐさを切り取った構図は、まるで映画の一場面のようです。
エドガー・ドガ「踊り子たち、ピンクと緑」の展示風景
今回の展覧会では、館内での注意事項や展覧会の注目作品の紹介などを行うコミュニケーションロボットが登場します。Cruzr(クルーザー)です。見かけたら、声をかけてみてはどうでしょう?
コミュニケーションロボットCruzr(クルーザー)
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2021年11月13日 ]
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