日常生活で目にするさまざまなビジュアル情報。1990年代以降のグラフィックデザインをテーマに、日本語と文字のデザインの歴史を前提に紐解いていく展覧会が、21_21 DESIGN SIGHTで開催中です。
21_21 DESIGN SIGHT 会場入口
会場内のギャラリー2では、国内外54組のグラフィックデザイナーやアーティストによるクリエイションを、「造形性」「身体性」「メディア」などの13のテーマに分けて紹介しています。ここではいくつかのセクションを取り上げていきます。
「もじ イメージ Graphic 展」会場風景
コンピューターの低価格化やデジタルツールやフォントの拡充によってグラフィックデザインの制作環境がデジタルに移行した2000年代。その一方で存在感を発揮したのが、絵を描くように文字や図形を自在に構成するグラフィック表現です。
テーマ「造形と感性」では、50年代から活躍し、若い世代に再評価されている仲條正義や服部一成、菊池敦己の作品を紹介します。
会場風景(ギャラリー2:テーマ「造形と感性」)
2010年代には、広告から出版、ファッションや都市空間まで、あらゆるメディアに人物イラストの使用が増えていきます。日本の携帯電話に由来する絵文字も世界的に用いられるようになったのもこの時期です。
みふねたかしによるフリー素材やNoritakeの線画表現は、出版や広告、ファッションとイラストの関係を一新し、“時代の表現”となりました。
会場風景(ギャラリー2:テーマ「言葉とイラストレーション」)
2000年台以降には、漫画やアニメにおける領域においても、デザインの意識が高まります。
漫画というメディアが日本において特殊な発展を遂げた背景には、漢字と仮名の複数文字を併用して“図として見ること”と、“音として読むこと”を同時に行う日本語の構造があるとも言われています。
会場風景(ギャラリー2:テーマ「キャラクターと文字」)
ここでは漫画装丁のパイオニア・祖父江慎をはじめ、現代アニメ・漫画のコンテンツの最前線で活動するクリエイターの事例を紹介しています。
会場風景(ギャラリー2:テーマ「キャラクターと文字」)
日本の文字の特質を活かしたデザインを開拓した田中一光などの先駆的なデザイナーが活躍する一方で、アルファベットによるスタイリッシュな演出も生み出されてきました。
日本のクリエイターたちは、欧米の映画や音楽、ファッションに大きく影響を受けながら独自の成果を生み出してきました。
会場風景(ギャラリー2:テーマ「ファッションとカルチャー」)
今日では文化のトレンドは、動画や画像のプラットフォームが媒体となって、言語以上にビジュアルやサウンドによる感覚を通じてグローバルな規模で共有されています。グラフィックデザインにおいても、インターネットの普及以降、グローバルなトレンドが見られるようになっています。
現在のグローバル社会における文化生産においては、異なる文化間の翻訳がカギとなると言われている中でデザイナーは、その内容をグラフィック的に翻訳、固定、発信することが重要な位置付けになってきています。
「グローバル性と固有性」会場風景
グラフィックデザインの成り立ちや面白さ、豊かさを発見できる今回の展覧会。会場入口の展覧会ディレクターの室賀清徳、後藤哲也、加藤賢策によるメッセージパネルのタイポグラフィや絵文字からも、3者3様の表現を感じることができます。
[ 取材・撮影・文:古川 幹夫、坂入 美彩子 2023年11月23日 ]