エンタテインメントとしても強力なコンテンツである戦国時代。展覧会でもしばしば取り上げられていますが、本展にも全国から揃った歴史資料や美術工芸品がずらり。歴史好きにはたまらない機会となりました。
戦国時代の範囲にも所説ありますが、本展では1454年の「享徳の乱」と1467年の「応仁・文明の乱」から、織田信長による将軍・足利義昭追放までとし、100年余の流れを網羅的に紹介していきます。
序章の後は合戦の紹介から、川中島の合戦を描いた屏風が目を引きます。謙信の一撃を信玄が軍配で受けたエピソードは、後年に描かれた絵画で繰り返し表現されています。
序章「時代の転換」、第1章「合戦 静寂と喧騒」続いて、戦国時代の主人公である武将について。足利将軍家をはじめ細川、三好、浅井、朝倉、斎藤、織田、今川と、列島各地で力を蓄えた面々が、肖像画や愛用品で紹介されていきます。
刀剣女子がお目当ての義元左文字は、ここで展示。桶狭間で戦死した今川義元から信長、秀吉、家康と伝わった名刀です(展示は12/18まで)。
名だたる戦国大名との生々しい交渉が感じられるのが、上杉家文書。内容は感謝から催促、誘惑、釈明とさまざまで、戦国の世を懸命に生き抜こうとする姿が浮かび上がります。
第2章「群雄 駆け抜けた人々」第3章は「権威」について。各地に有力大名が乱立しても、京都を頂点としたヒエラルキーが消え去ったわけではありません。
足利将軍家が定めた美の基準や、天皇を頂点とした朝廷の秩序。形骸化しているかに思える京の権威も、新興勢力である地方の有力者にとっては憧れの的でした。
秩序の破壊者として捉えられる戦国大名ですが、むしろ旧来からの秩序を頼りにして、自らの存在意義を高めようとしていったのです。
第3章「権威 至宝への憧れ」戦国時代は、社会的には村や町が成立し、巡礼が盛んになった時代。交易も栄えて地方まで富が波及し、豊かな時代だったともいえるのです。
人の物の流れは、列島だけに収まりませんでした。アイヌとの交易で得たラッコの皮は将軍に献上され、中国南部で焼かれた陶磁器は石見(島根県)に、大友氏(大分)にはベトナム・タイ・ミャンマーの陶磁器がもたらされています。
エピローグでは、近江観音寺に残る古文書が紹介されています。人々が願いを込めた寄進状に書かれた「現世安穏」「後生菩提」の文字。この世の安泰と、後世ではより良い世界をと願う、素朴な思いが込められています。
第4章「列島 往来する人と物」、終章「新たなる秩序」書状から美術品まで膨大な資料を紹介する本展。大きく前後期に分かれており、12月までの前期では西国の将軍・大名、1月からの後期は東国の大名を中心に紹介します。展示作品については、
公式サイトでご確認ください。東京展の後は京都、山形に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年11月22日 ]■戦国時代展 に関するツイート