← 前期展の取材レポート
大好評だった東京展を受けて、2月6日(土)に開幕した春画展。京都で春画を大々的に披露するのは初めての試みでしたが、開幕直後から大きな話題に。「とても美しい」「想像以上にユニーク」等々、ネットでも肯定的な声が多く聞かれます。
前後期で多くの作品が入れ替わった本展。通常、前後期で開催される展覧会は、前期スタート時に後期の出展作品も決まっていますが、今回は珍しく直前まで作品の選定が続けられ、前期展での来館者の反応も踏まえた構成となりました。
春画ならではの荒唐無稽な表現が注目を集めたため、ユニークな版画はまとめて展示。研究者の間で知られた名品も一カ所にまとめされており、歌麿・北斎・清長の名作が並ぶ豪華なコーナーが設けられました。
肉筆も展示替え(絵巻は巻き替え)が多数。これからの季節にも考慮し、春~夏を題材にした作品も目にとまります。
肉筆画 これからの季節も考慮し、春~夏を題材にした作品も増やしました
春画の発展について、幕藩体制からの影響を指摘するのは鈴木堅弘氏(京都精華大学 非常勤講師)です。
江戸時代の各藩は自立していたため、ある藩が描かせた見事な春画に、他藩も負けずに描かせて、という切磋琢磨の末に、豊かで質の高い春画の文化が広まっていったのでは、と推測します。
もちろんその原点にあるのは、江戸時代という安定した時代。平和なくして、男女がともに性を愉しむ絵画などあり得ません。春画こそ、泰平の世が生んだ平和の象徴ともいえそうです。
版画 「これぞ」という作品は展示室最後にまとめました
最後に、トリビア的なネタもご紹介しましょう。
①北斎
葛飾北斎は「蛸と海女」(喜能会之故真通)があまりにも有名ですが、この絵は元ネタがあり、さらに遡ると落語が原点と思われます。また春画では女性の胸に関心がもたれない事が多いのですが、北斎は例外的に胸を大きく描く絵師のひとり。ただ北斎は、どちらかというと春画は少ない方に入ります。
②男性器
女性を襲う悪漢など、春画に登場する「悪相」の男性は、男性器がいわゆる「皮被り」として描かれる場合が多く見られます。逆に皮被りの男=悪人、の記号ともいえます(ただし歌舞伎役者の顔と男性器を描いた版画では、女性っぽさの表現が皮被りです)
自分なりの楽しみ方で見ていただきたい春画の世界。会期終盤に近づくと、さらなる混雑も予想されます。できるだけ早めにご覧ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年3月8日 ]
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