タイトルに「子どものための」とありますが、展覧会そのものは大人向け。子どもにとってふさわしい建築空間を考える展覧会です。
日本の近代教育が幕を開けた明治時代。政府は国民の知的水準の向上のため、小学校の設立・普及に努めました。1872(明治5)年、日本で初めて近代的学校制度を定めた基本法令「学制」が発布。さらに7年後の1879(明治12)年、改正教育令により、すべての子どもが小学校に通うことが定められました。
建築の展覧会は「専門知識を知らないから」と、敬遠してしまう方がいるかもしれません。しかし本展では、教材や学校家具、子ども向け雑誌などを総合的に展示。当時の子どもたちが受けていた教育がわかる構成となっています。じっくり読み込むため、女性はヒールではなく、かかとの低い靴での観覧をオススメします。
会場は5章構成。1章で近代教育の幕開けとなった明治時代を、続く2章では「子ども中心」の自由度の高い教育思想を掲げた大正時代を紹介。インターミッションとして、戦前・戦中の学校教育が展示されています。
3章から5章では、戦後から現代までの学校建築の変遷を紹介。戦火により壊滅的な被害を受けた日本の各都市の学校の復興から、アメリカから導入されたオープンスクールの思想、そして生活の場としての学校建築が展示されています。
筆者は、5章「今、そしてこれからの子どもたちへ 1987-」で取り上げられている時代に、小学校へ通っていました。さらに、自分が遊んでいた公園も紹介されていて、驚きました。もしかしたら、あなたの思い出の校舎、あるいは遊び場に関する展示があるかもしれません。
今回、紹介されていた遊び場に行ってみたい! と思ったのですが…実際の建築物は「子ども向け」。残念なことに大人になったら遊べない空間も多くあります。小さな子どもがいるお父さん・お母さん、ぜひ展覧会で見た遊び場へ連れて行ってあげてください。
本展終了後、
青森県立美術館へ巡回します。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年1月11日 ] | | 子どものための建築と空間展
長澤 悟(監修),パナソニック 汐留ミュージアム(編集),青森県立美術館(編集) 鹿島出版会 ¥ 2,376 |