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    レポート
    レオポルド美術館 エゴン・シーレ展
    東京都美術館 | 東京都
    16歳でウィーン美術アカデミーに入学した天才、エゴン・シーレの大規模展
    わいせつ画頒布とモデルの少女誘拐容疑で収監も。常識にとらわれない創作
    スペイン風邪でわずか28歳で死去。30年ぶりの展覧会は東京会場のみで開催

    19世紀末~20世紀初頭に活躍した画家、エゴン・シーレ(1890-1918)。わずか16歳でウィーン美術アカデミーに入学、常識にとらわれない創作で逮捕されることまでありましたが、わずか28歳で死去するまで精力的に活動し、その作品は今なお人々を魅了し続けています。

    ウィーン・レオポルド美術館の所蔵作品を中心に、数々のシーレ作品が来日。同時代作家たちの作品もあわせウィーン世紀末美術を展観する大規模展が、東京都美術館で開催中です。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より 東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場入口
    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場入口


    会場は14章構成。ここでは目についた作品をご紹介したいと思います。

    冒頭はシーレの初期作品。レオポルト・ツィハチェックはシーレの裕福な叔父。シーレの父親が早くに亡くなると、若いシーレの後見人になりました。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より エゴン・シーレ《レオポルト・ツィハチェックの肖像》1907年 豊田市美術館
    エゴン・シーレ《レオポルト・ツィハチェックの肖像》1907年 豊田市美術館


    シーレは1907年頃に、当時のウィーン美術界の中心人物だったグスタフ・クリムトと知り合います。クリムトはシーレの才能を理解し、自身のコレクターたちにシーレを紹介しました。

    1908年から1909年頃のシーレの作品には、クリムトからの影響が感じられます。《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》における正方形のカンヴァス、また背景に金や銀を用いる手法は、明らかにクリムトの作風です。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》1908年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》1908年 レオポルド美術館


    展覧会の目玉といえる作品が《ほおずきの実のある自画像》。シーレの自画像のなかでは最もよく知られた作品で、描いたのは22歳の時です。

    鑑賞者に視線を向けるシーレは、若き日の野心が感じられ、挑発的にもみえる表情。すばやい筆致で面を確実に捉え、配色や構図も申し分ありません。あまりにも早熟な才能に驚かされます。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館


    《母と子》は、キリスト教絵画の伝統的な聖母子像を思わせる構図ですが、母親はしっかりと目を閉じ、一方で子どもは恐怖心をあらわにしたような表情。平和や愛情よりは、死や不安のほうがイメージされます。

    作品の制作には指も使われたようで、一部に指紋が残っています。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より エゴン・シーレ《母と子》1912年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《母と子》1912年 レオポルド美術館


    展覧会には同時代の作品も出展されています。コロマン・モーザーは、クリムトとともにウィーン分離派を創設したひとり。機関誌『ヴェル・サクルム』のデザインを担当しました。

    1903年にはウィーン工房を設立。中心的な存在として、空間デザインや家具、工芸品などでも活躍しました。絵画でも花をモティーフにした装飾的な作品が見られます。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より コロマン・モーザー《キンセンカ》1909年 レオポルド美術館
    コロマン・モーザー《キンセンカ》1909年 レオポルド美術館


    リヒャルト・ゲルストルは、ウィーン美術アカデミーで学んだ画家。《半裸の自画像》は象徴主義的な作品で、受難のキリストを暗示しています。

    ゲルストルは失恋が原因で25歳で自殺。死後、作品は長らく封印されていましたが、1931年に初めて展覧会が開催され、再び注目されるようになりました。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より リヒャルト・ゲルストル《半裸の自画像》1902/04年 レオポルド美術館
    リヒャルト・ゲルストル《半裸の自画像》1902/04年 レオポルド美術館


    しばしばエロティックな作品を描いたシーレ。1912年にはわいせつ画頒布とモデルの少女誘拐の容疑で収監されたこともあります。

    シーレが描く裸婦は、体を極端にひねったり、うずくまったりと、バラエティに富んだポーズが目立ちますが、どの作品も的確なデッサン力は特筆されます。


    東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」会場より (右)エゴン・シーレ《赤い靴下留めをして座る裸婦、後ろ姿》1914年 レオポルド美術館
    (右)エゴン・シーレ《赤い靴下留めをして座る裸婦、後ろ姿》1914年 レオポルド美術館


    シーレは1918年の第49回ウィーン分離派展に数多くの作品を出展。メインの画家として紹介されて大きな成功を収め、数々の作品が購入されるも、世界的に流行したスペイン風邪に感染。妊娠中の妻が亡くなった3日後に、シーレも28歳で死去しました。

    シーレに焦点を当てた大規模展は、1991年~92年にBunkamura ザ・ミュージアムなどで開催された「エゴン・シーレ展」以来、約30年ぶり。東京展のみで巡回はしません。お見逃しなく。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年1月25日 ]

    グスタフ・クリムト《シェーンブルン庭園風景》1916年 レオポルド美術館に寄託(個人蔵)
    エゴン・シーレ《頭を下げてひざまずく女性》1915年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《カール・グリュンヴァルトの肖像》1917年豊田市美術館
    エゴン・シーレ《縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ》1915年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《横たわる女》1917年 レオポルド美術館
    エゴン・シーレ《しゃがむ二人の女》1918年(未完成) レオポルド美術館
    会場
    東京都美術館
    会期
    2023年1月26日(木)〜4月9日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:30、金曜日は20:00まで (入室は閉室の30分前まで)
    休館日
    月曜日
    住所
    〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
    電話 ハローダイヤル 050-5541-8600 (全日/9:00~20:00)
    公式サイト https://www.egonschiele2023.jp/
    料金
    一般 2,200円
    大学生・専門学校生 1,300円
    65歳以上 1,500円

    2023年1月12日 (木) 10時より予約開始
    本展は、展示室内の混雑を避けるため、日時指定予約制となっております。
    展覧会詳細 「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」」 詳細情報
    このレポートに関連する特集
    大注目は都美「エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」。ファッション好きには現美「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」、Bunkamura「マリー・ローランサンとモード」。三菱一号館の「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」展も楽しみです。
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