平安時代から江戸時代にかけて人々を夢中にさせた、公家による歌合や家の芸を高める蹴鞠、武家の乗馬や弓矢など。日々の暮らしに潤いを与え必要不可欠といえる「遊び」に焦点をあてた展覧会が、根津美術館で開催中です。
根津美術館「遊びの美」会場入口
会場では、屏風を中心に絵画や古筆から「遊び」を紐解いていきます。その中でも数点をご紹介していきます。
新春にもふさわしい展覧会のポスターにもなっている《桜下蹴鞠図屏風》に描かれているのは、満開の桜の木の下、邸前の庭で行われる蹴鞠の様子。蹴鞠は、鹿革の鞠を蹴って回数や姿勢の美しさを競うもので、公家が屋外で楽しんだ代表的な遊びのひとつでした。
重要美術品 《桜下蹴鞠図屏風》 江戸時代 17世紀
王朝貴族の優雅な遊びの情景が展開されている《舟遊紅葉狩図》。舟遊びに興じる姿の右幅は管弦が演奏される様子を、左幅では酒席を設けて紅葉狩りを楽しむ様子を映し出しています。
《舟遊紅葉狩図》 住吉広定筆 江戸時代 19世紀
平安時代の貴族の贅沢な遊びを表しているのは、源氏物語の各場面を繊細で美しい描写で表し綴った画帖です。ここでは、光源氏の邸宅の池で催した舟楽の遊びの様子と、その翌日に紫の上が遣わした童女が登場する第二十四帖「胡蝶」(右ページ)に注目です。
《源氏物語画帖》 伝 住吉具慶筆 江戸時代 17世紀
天下泰平の江戸時代や中世において武家の遊びとされていた、乗馬や弓矢の技術を争う犬追物や狩猟が主題となった絵画も残されています。馬上から先端をカバーした矢を犬に射る犬追物は、鎌倉時代以降には流鏑馬、笠懸とともに「馬上の3つ物」として武芸の鍛錬のために行われました。
重要美術品 《犬追物図屏風》 江戸時代 17世紀
庶民の経済力や行動範囲が拡がった江戸時代。娯楽や観光に兼ねて祭礼や寺社参詣する様子は、《洛中洛外図屏風》をはじめ絵画作品からもうかがうことができます。
《洛中洛外図屏風》 江戸時代 17世紀
祇園祭モチーフにしたこの作品の右隻には山鉾巡行、左隻に神輿渡御が描かれ、生き生きとした表情から人々の祭礼への楽しみが伝わってきます。
《洛中洛外図屏風》 江戸時代 17世紀 (部分)
右幅にかぶき者、中幅に禿を従えた遊女、左幅に若衆を配した《風俗図》。遊女の気を引こうとする2人の男に対し、気のない素振りを繰り広げた、近世初期の風俗画の中でも秀逸な出来栄えと言えます。
重要美術品 《風俗図》 江戸時代 17世紀
2階では、新年にふさわしい除夜釡をはじめとする作品を展示しています。また、青銅鏡を展示したコーナーでは「兎をさがせ! Where are the Rabbits ?」を展開。十二支の中から今年の干支である“兎”を探す“遊び”を楽しんでみては。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年12月16日 ]