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    レポート
    M式「海の幸」 ― 森村泰昌 ワタシガタリの神話
    アーティゾン美術館 | 東京都
    「自画像的作品」をテーマに制作する森村泰昌が青木繁《海の幸》と対峙
    明治期以降の日本の文化、政治、思想などの変遷史を、独自の視点で形象化
    青木作品約10点と森村作品約60点で構成。うち50点以上が森村による新作

    1985年にゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作して以来、「自画像的作品」をテーマにした作品を発表し続けている森村泰昌(1951-)。

    アーティゾン美術館が所有する青木繁の《海の幸》に触発されて制作した大作を公開する展覧会が、同美術館で開催中です。



    アーティゾン美術館「ジャム・セッション M式「海の幸」 ― 森村泰昌 ワタシガタリの神話」会場入口


    昨年開催された「鴻池朋子 ちゅうがえり」に続き、石橋財団コレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」の第2弾として開催される本展。

    森村ならではの解釈で、青木への熱い思いが新たなる作品シリーズになりました。

    展覧会は、序章「『私』を見つめる」から。青木繁の自画像などとともに、早速、青木に扮した森村の作品が登場します。



    (左から)青木繁《自画像》1903年 石橋財団アーティゾン美術館蔵 / 森村泰昌《自画像/青春(Aoki)》2016/2021年 作家蔵


    続く第1章は「『海の幸』鑑賞」。《海の幸》を中心に「海」「神話」に関する青木繁の作品8点と、森村による独自の作品解釈やコメントも紹介されています。

    青木は東京美術学校在学中に白馬会の最高賞を受賞して、華々しくデビュー。《海の幸》は卒業後に白馬会展に出品された作品で、青木にとって初めての大作です。



    (左から)青木繁《海の幸》1904年(重要文化財) / 青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年(重要文化財) ともに石橋財団アーティゾン美術館蔵


    第2章は「『海の幸』研究」。森村は《海の幸》をテーマにした《M式「海の幸」》を制作しましたが、そのプロセスを紹介するのがこの章です。

    原作である《海の幸》に描かれた空間を読み解き、新たな世界を創出するため、森村は10点のジオラマを制作しています。



    第2章「『海の幸』研究」展示風景


    (左から)《M式「海の幸」ジオラマ02》2021年 / 《M式「海の幸」ジオラマ01》2021年


    展示ケースにはスケッチやメモ類も。細かな指示で、創作のプロセスを感じることができます。

    奥に進むと、作品のため制作されたオリジナルの衣装も展示されています。



    森村泰昌 M式「海の幸」のためのスケッチ、メモなど


    (左奥から)《衣装 07》 / 《衣装 06》 / 《衣装 05》 / 《衣装 04》 / 《衣装 03》 すべて2021年


    コロナ禍という事もあり、森村は近年のチームで制作する方法から原点回帰。今回の作品ではメイク、スタイリング、撮影など、すべて森村ひとりで手がけました。

    登場人物は10連作で計85人。途方もない制作に挑む森村の姿は監視カメラで記録され、その映像も公開されています。



    森村泰昌《「ワタシ」が「わたし」を監視する》2021年


    いよいよ第3章「M式『海の幸』変装曲」に、連作《M式「海の幸」》が登場します。

    《海の幸》が制作された明治を起点に、それぞれの時代の文化や歴史を背景にしながら、大正、昭和、そして現代から未来まで続きます。



    第3章「M式『海の幸』変装曲」展示風景


    森村泰昌《M式「海の幸」第1番:假象の創造》2021年 作家蔵


    (左から)森村泰昌《M式「海の幸」第5番:復活の日1》2021年 / 森村泰昌《M式「海の幸」第4番:暗い絵》2021年 ともに作家蔵


    最後の第4章は「ワタシガタリの神話」。青木に扮した森村による独白(ワタシガタリ)の映像作品です。

    なぜ《海の幸》が神話化されたのか、関西弁で青木に語りかける森村。私たちはどこから来てどこへ行くのか。森村流の解釈でストーリーは進みます。

    ちょうど70歳になった森村ですが、創作に対する情熱は溢れるばかり。気迫に満ちた独特の作品世界をお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年10月1日 ]

    第2章「『海の幸』研究」展示風景
    第3章「M式『海の幸』変装曲」展示風景
    森村泰昌《M式「海の幸」第2番:それから》2021年 作家蔵
    森村泰昌《M式「海の幸」第4番:暗い絵》2021年 作家蔵
    会場
    アーティゾン美術館 6F展示室
    会期
    2021年10月2日(土)〜2022年1月10日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00〜18:00
    毎週金曜日は20:00まで *入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(1月10日は開館)、12月28日−1月3日
    住所
    〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-2
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.artizon.museum/
    料金
    日時指定予約制
    ウェブ予約チケット1,200円、当日チケット(窓口販売)1,500円、学生無料(要ウェブ予約)
    *この料金で同時開催の展覧会もご覧いただけます。
    *ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ、美術館窓口でも当日チケットを販売します。
    *中学生以下の方はウェブ予約不要です。
    展覧会詳細 「石橋財団コレクション×森村泰昌  M 式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」 詳細情報
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