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    レポート
    特別展 月岡芳年 月百姿
    太田記念美術館 | 東京都
    最晩年に描いた集大成
    2カ月連続で開催されている、月岡芳年(1839-92)の企画展。第2弾は月にちなんだ物語を題材にした、最晩年の傑作「月百姿」が登場です。全100点が一挙に展示されるのは、太田記念美術館では今回が初めてです。
    (左から)《玉兎 孫悟空》明治22年(1889)10月10日印刷・11月出版 / 《破窓月》御届明治19年(1886)6月1日
    (左から)《はかなしや波の下にも入ぬべしつきの都の人や見るとて 有子》御届明治19年(1886)9月6日
    (左から)《法輪寺の月 横笛》明治23年(1890)12月20日印刷・出版 / 《垣間見の月 かほよ》御届明治19年(1886)9月6日
    (左から)《名月や畳の上に松の影 其角》御届明治18年(1885)10月 / 《朝野川晴雪月 孝女ちか子》御届明治18年(1885)12月
    (左から)《大物海上月 弁慶》御届明治19年(1886)1月 / 《住よしの名月 定家卿》御届明治20年(1887)6月23日
    (左から)《高倉月 長谷部信連》御届明治19年(1886)8月 / 《山木館の月 景廉》御届明治19年(1886)3月
    (左から)《稲葉山の月》御届明治18年(1885)12月10日 / 《鳶巣山暁月 戸田半平重之》御届明治20年(1887)6月23日
    (左から)《月の四の緒 蝉丸》明治24年(1891)8月印刷・出版 / 《月輝如晴雪 梅花似照星 可憐金鏡転 庭上玉房馨 菅原道真》御届明治19年(1886)1月
    (左から)《忍岡月 玉渕斎》明治22年(1889)印刷・出版 / 《三日月の頃より待し今宵哉 翁》明治24年(1891)印刷・出版
    「月をテーマにした日本美術」なら珍しくありませんが、「月が主題の100連作」となると話は別。月岡芳年は名前に「月」の文字が入っているため、月に対して強い思い入れがあったのかもしれません。

    「月百姿」が出版されたのは明治18~25年です。全100点が刊行されたのが明治25年4月、芳年が没したのは同年6月なので、文字通り最晩年の作品という事になります。

    会場ではテーマで分類して4章で構成されています。第1章「麗しき女性たち」には、平安時代~江戸時代、さらに中国の女性も登場します。


    第1章「麗しき女性たち」

    続いて「妖怪・幽霊・神仏」。妖怪は前の展覧会「月岡芳年 妖怪百物語」でも紹介されていた芳年得意のジャンルですが、「月百姿」での妖怪は恐ろしい描写は少なめ。月が出ている夜の静寂さの表現を重視したように感じられます。

    展覧会メインビジュアルの《大物海上月 弁慶》は、舳先に立つ弁慶が大波に対峙する図。本来は大波の向こうに、平家の亡霊が描かれるはずです。主役のひとつをあえて描かずポイントを絞った構成は、芳年ならではといえるでしょう。


    第2章「妖怪・幽霊・神仏」

    第3章は「勇ましき男性たち」。師匠の歌川国芳も武者絵が得意でしたが、芳年が描く豪傑や武将、中国の英雄も見事です。得意のストップモーションのような描写だけでなく、武将がすっと屹立する静かなイメージの作品も目をひきます。

    「月百姿」では、摺りにも優れた技が用いられています。一見ではベタ塗りですが、角度を変えて絵を見ると文様が見える「正面摺り」も楽しめます。


    第3章「勇ましき男性たち」

    最後は「風雅・郷愁・悲哀」。「月百姿」には和歌や漢詩、そして音楽にまつわる逸話が題材になった作品が数多くあります。

    「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出し月かも」は、阿倍仲麻呂が遠く離れた奈良を想って詠んだ一首。秀吉に追放された秀次は、月明かりが差す寺で我が身の不運を嘆きました。しみじみとした情景にも、芳年の技は光ります。


    第4章「風雅・郷愁・悲哀」

    初期の代表作《英名二十八衆句》の強烈な印象もあり、以前は「血みどろ絵」(残酷絵・無残絵)のイメージが強かった芳年。近年では豊かな創造性が注目を集め、多くのファンに愛される存在になりました。

    まさに芳年が全てを注いだ集大成といえる「月百姿」。芳年マニアからビギナーファンまで、ごゆっくりお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年8月31日 ]

    月岡芳年 月百姿月岡芳年 月百姿

    日野原 健司 (著), 太田記念美術館 (監修)

    青幻舎
    ¥ 2,484


    ■月岡芳年 月百姿 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年9月1日(金)~9月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日(9/18は開館)、9/19
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
    料金
    一般 1,000円、大高生 700円、中学生以下 無料
    展覧会詳細 「特別展 月岡芳年 月百姿」 詳細情報
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