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    レポート
    ティツィアーノとヴェネツィア派展
    東京都美術館 | 東京都
    水の都で輝く色彩
    アドリア海に面し、海洋貿易で発展したヴェネツィア。東西文化の交流地点となったこの地は、ローマやフィレンツェに匹敵するルネサンス美術の中心地として繁栄しました。本展ではヴェネツィア・ルネサンスの巨匠ティツィアーノを軸として、ヴェネツィア派の流れを展観します。
    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フローラ》1515年頃 フィレンツェ ウフィツィ美術館
    Ⅰ 1460-1515:ヴェネツィア、もう一つのルネサンス 会場風景
    左から)マルコ・パルメッツァーノ《死せるキリストへの香油の塗布》1500年頃 ヴィチェンツァ キエリカーティ宮絵画館、ジョヴァンニ・マンスエーティ《博士たちとの議論》1500-10年 フィレンツェ ウフィツィ美術館、ベッリーニの工房《キリストの割礼(ジョヴァンニ・ベッリーニに基づく)》1500年代 ナポリ カポディモンテ美術館
    左から)ベルナルディーノ・リチーニオ《騎士の肖像》1520-25年 フィレンツェ ウフィツィ美術館、ベルナルディーノ・リチーニオ《高位聖職者の肖像》1520年代前半 ナポリ カポディモンテ美術館
    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ダナエ》1544-46年頃 ナポリ カポディモンテ美術館
    左から)アンドレア・スキアヴォーネ《羊飼いの礼拝》1536-40年 個人蔵、アンドレア・スキアヴォーネ《揺りかごの幼児キリストと諸聖人》1550-54年 個人蔵
    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《教皇パウルス3世の肖像》1543年 ナポリ カポディモンテ美術館
    左から)ダル・フリーゾ《カナの婚礼(ヴェロネーゼに基づく)》1590年頃 ヴィチェンツァ キエリカーティ宮絵画館、ヴェロネーゼの工房《ベルシャツァル王の饗宴》16世紀末-17世紀初頭 ヴィチェンツァ キエリカーティ宮絵画館、ボニファーチョ・ヴェロネーゼと助手《最後の晩餐》1540-45年 フィレンツェ ウフィツィ美術館
    パオロ・ヴェロネーゼ《聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ》1562-65年頃 フィレンツェ ウフィツィ美術館
    ルネサンス期のヴェネツィア美術は、2つの工房によって発展しました。特にヤコポ・ベッリーニの工房は、後にティツィアーノをはじめとする優れた画家を輩出しました。

    海に囲まれ、湿気の多いヴェネツィアは、当時主流だった壁に漆喰を塗って描くフレスコ画が適さず、カンヴァスに油彩で描かれた作品が多数残っています。


    「Ⅰヴェネツィア、もう一つのルネサンス」会場風景

    美しい女神《フローラ》は、2フロア目で出迎えてくれます。美しい金髪、艶やかな肌の表現など、ティツィアーノの卓越した技術で描き出される女神はため息が出るほど。フローラはローマ神話の花の女神で、右手には花を持っています。その指に小さな指輪が描かれていることから、結婚の寓意画とも言われます。


    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フローラ》1515年頃 フィレンツェ ウフィツィ美術館

    ベッドに横たわる魅力的な裸婦像は、ローマ神話の《ダナエ》。王侯貴族からの注文で描かれた作品です。ダナエやレダなどのローマ神話は、より美しく官能的な裸婦を描く口実としてルネサンスの画家たちに好まれました。

    ティツィアーノはローマで《ダナエ》を制作していた際、ミケランジェロとあっています。アトリエで《ダナエ》を見たミケランジェロは、色彩や様式を大層気に入り褒めますが、デッサンがなっていないと指摘します。素描を重視するフィレンツェと、色彩を重視するヴェネツィアの違いがよくわかるエピソードです。


    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ダナエ》1544-46年頃 ナポリ カポディモンテ美術館、ヤコポ・ティントレット《レダと白鳥》1551-55年頃 フィレンツェ ウフィツィ美術館

    ティツィアーノは70年近い画業の中で、次々と様式を変化させていきます。この展覧会では初期作品から晩年に近い作品まで、その変化を楽しめるのも1つのポイント。《マグダラのマリア》では美しい女性の髪の表現はそのままに、陰影を強調した作風に変化していることが分かります。

    長い画業で多くの弟子を育てたティツィアーノ。ティントレットやヴェロネーゼなどがヴェネツィア派の伝統を受け継ぎながら、それぞれの個性を発揮します。


    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《マグダラのマリア》1567年 ナポリ カポディモンテ美術館、ティツィアーノと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》1560-70年頃 国立西洋美術館

    ルーベンスやルノワールなど、後年の画家にも多大な影響を与えたティツィアーノ。ヴェネツィア芸術の代表といえる存在で、現在でも愛され続けています。

    展覧会はイタリア国内屈指の美術館から多くの作品が来日。東京展のみの開催です。

    [ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2017年1月20日 ]

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    晋遊舎
    ¥ 1,200


    ■ティツィアーノとヴェネツィア派展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年1月21日(土)~4月2日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:30
    休館日
    月曜日、3月21日(火) ※ただし、3月20日(月・祝)、27日(月)は開室
    住所
    東京都台東区上野公園8-36
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://titian2017.jp/
    料金
    一般 1,600(1,300)円 / 大学生・専門学校生 1,300(1,100)円 / 高校生 800(600)円 / 65歳以上 1,000(800)円
    ※()内は20名以上の団体料金及び前売り料金
    ※中学生以下は無料
    ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
    展覧会詳細 「ティツィアーノとヴェネツィア派展」 詳細情報
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