展覧会は
サンリツ服部美術館のコレクションから水墨画や茶道具などを展示する企画展。前後期あわせて60件が展示されます。
会場前期展最大の注目が国宝《寒山図》。日本の初期水墨画を代表する存在ながら、生没年もはっきりしない謎多き水墨画家・可翁による唯一の国宝絵画です。2010年から2012年にかけて、表装を解体、欠損部分には補紙を行うなど大規模な修理が行われて再生。ついに展覧会でのお披露目となりました。
寒山は風狂を代表する人で、拾得とともに描かれた「寒山拾得図」は禅宗絵画では定番(後期展では因陀羅(いんだら)が描いた「寒山拾得図」も出展されます)。可翁による寒山は、衣服などの大胆な描写と、細い筆で描いた柔らかな表情が印象的。実に自由で伸びやかです。
国宝《寒山図》可翁筆こちらも前期に展示される兀庵普寧(ごったんふねい)による墨跡《法語》は、重要文化財。兀庵普寧は鎌倉時代に日本に来朝した禅僧で、建長寺の第2世住持。法語は仏教の教義の事で、本作は帰国に際して弟子に残したものとみられています。兀庵普寧は、MOA美術館や奈良国立博物館などにも、重要文化財に指定されている墨跡があります。
室町時代末期の茶人・武野紹鷗(たけのじょうおう)が所持していた《唐物茄子茶入 銘 紹鷗茄子》は重要美術品(こちらは通期展示)。丸いかたちが賀茂茄子のように見える事から、このような形の茶入れは「茄子」と呼ばれます。武野紹鷗は千利休の師でもあります。
数々の「茶の湯の美」が並ぶ展覧会はセイコーエプソン初代社長であった服部一郎(1932-87)の没後30年を記念した企画。最後に
サンリツ服部美術館の藤生明日美さんにお話しを伺いました。
サンリツ服部美術館の藤生明日美さん前期展は8月2日(火)まで。8月4日(木)からの後期展には本阿弥光悦による国宝《白楽茶碗 銘 不二山》が登場。文化財に指定されている茶道具は数多くありますが、日本でつくられた国宝茶碗はわずかに2点。そのうちのひとつです。門外不出の逸品、今年の展示はこの機会のみとなります。
今秋は東京国立博物館でも、過去最大規模の禅宗文化の展覧会が開催(「禅 − 心をかたちに −」10月18日~11月27日)、メモリアルイヤーという事もあり禅宗文化の展覧会は盛り上がりを見せています。ただ、国宝《寒山図》と国宝《白楽茶碗 銘 不二山》は、ここでしか見られません。ぜひ、諏訪まで。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月10日 ]■サンリツ服部美術館 に関するツイート