展覧会は序章を含め8部構成。絵画も日本画から洋画まで、さらに彫刻や陶芸など盛りだくさんです。
序章 猫の誕生
第一章 孤高の猫
第二章 猫のいる風景
第三章 眠る猫
第四章 猫と蝶
第五章 猫と鼠
第六章 猫と美人
第七章 中国・朝鮮の猫
地下1階 第一展示室会場内会場には、猫が蝶とじゃれている絵を何点か見ることができます。「猫」と「命」の発音が同じで、さらに「蝶」と「長」も同じなので、長生きを願うごろ合わせです。中国では同じく蝶と猫の絵を「耄耋(もうてつ)」といい、同じく長命を願うごろ合わせで昔から好まれる題材でした。
猫は西洋では魔女の使いというイメージでも知られますが、このように吉祥の動物として好まれて描かれてきた歴史もあるのです。
地下1階の「第4章 猫と蝶」と2階の「第7章 中国・朝鮮の猫」より立体作品も今回は多数展示。猫好きの彫刻家、朝倉文夫の作品は生き生きと動く猫の姿をよくとらえています。
担当学芸員の平塚泰三さんの一押しは「黒楽銀彩手焙」。彫刻に見えますが、仁阿弥道八によって作られた陶器の置物です。手焙(てあぶり)という名の通り、茶席で手を温めるための道具です。背中の蓋から炭を入れ、猫をなでると手が温まるという遊び心。これが茶室においてあるのを想像すると、ほほえましく思えます。
仁阿弥道八《黒楽銀彩手焙》江戸時代 遠山記念館蔵「猫と女性」として描かれる定番の一つが「女三宮図」です。女三宮は、源氏物語の登場人物。じゃれた飼い猫が御簾を引っかけて、その姿を柏木中将に見られてしまい、不義の恋が始まる…という印象的なストーリーで知られます。
女性の着物の裾にじゃれつく猫というセットで、女三宮を市井の女性や遊女に置き換えて描いたのが「見立女三宮図」です。江戸時代は識字率の向上や解釈本が発行されたことで源氏物語が市民に普及し、美人とかわいい猫の取り合わせとして浮世絵を中心に流行しました。
「見立女三宮図」は2階の展示室「第6章 猫と美人」で見ることができます会場はどこもかしこも猫だらけ。うちの猫に似てる…ああこういう顔するよね、と顔が綻んでしまう展覧会です。
猫を飼っている方は、自慢の猫写真をプリントして持っていくと入場料が割引になるサービスも(詳細は
公式HP をご確認ください)。猫派の方にはもちろんお勧めですが、猫の魅力をご存じでない方、見れば猫派になれること間違いなしです。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2014年4月3日 ]