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    レポート
    大野麥風展 「大日本魚類画集」と博物画に見る魚たち
    東京ステーションギャラリー | 東京都
    額縁の中の水族館
    緻密な描写と、生き生きとした躍動感。明治末期から昭和初期にかけて活躍した大野麥風(おおのばくふう)が描いた魚の世界を総覧する、夏にぴったりの涼やかな展覧会がはじまりました。
    大野麥風 《ウナギ》(『大日本魚類画集』より)1941年8月 版画 姫路市立美術館蔵
    栗本丹州 《人喰鮫》(『魚貝譜』より)江戸時代後期写 写本彩色 西尾市岩瀬文庫蔵
    杉浦千里 《ヒラツメカニ》1996年 アクリル・ケント紙 杉浦千里の作品保存会蔵
    大野麥風 右《秋晴(もず)》/左《栗鼠》 絹本彩色 個人蔵
    大野麥風 《伊勢海老》(『大日本魚類画集』より)1937年10月 版画 姫路市立美術館蔵
    大野麥風 右《メバル》(『大日本魚類画集』より)1938年2月/左《飛魚》(『大日本魚類画集』より)1938年1月 版画 姫路市立美術館蔵
    大野麥風 《サケ》(『大日本魚類画集』より)摺り見本 個人蔵
    大野麥風 《あこう》版画 個人蔵 奥に見えるのは版木
    大野麥風 右《鱸群泳》 紙本彩色 二曲一隻/左《魚群海底》 紙本彩色 二曲一隻 個人蔵
    展示構成は下記の通りです。
    第1章 本草学・博物学世界の魚類画
    第2章 画家 大野麥風の船出
    第3章 重ね摺りが生む魚類木版画の光彩『大日本魚類画集』
    第4章 清新なる魚類画の高みへ

    まずは博物画としての魚類画から。博物画では背景を描かず、そのものだけを描きます。会場には江戸時代から明治、大正までの博物画が展示されており、いくつかには魚の実物写真も。見比べてみると描写の正確さがわかります。


    第1章 本草学・博物学世界の魚類画

    博物画の系譜の一人、杉浦千里の作品にも注目です。2001年に39歳の若さで他界しましたが、2009年の国際甲殻類学会で大変評判になりました。写真を凌駕する緻密さと称えられる描写は圧巻です。


    杉浦千里《シマイセエビ》

    大野麥風は1888年東京生まれ、洋画家として画壇デビューしますが、後に日本画へ転向し、木版画にも取り組みます。

    『大日本魚類画集』は1937年に発表された麥風の代表作。今回は全72点が勢ぞろいです。

    麥風の描く魚類画は、先に見た博物画とは一線を画します。魚の向きはそれぞれで、身をひねって泳いでいく姿や、上向き、下向きなど大変自由です。麥風は水族館に足を運び、時には潜水艇に乗るなど、魚が泳ぐ姿と、その環境をつぶさに観察し、ありのままに描いています。


    全72点に描かれた魚の数は約320匹にものぼります

    『大日本魚類画集』は、一見すると日本画のようですが、実はすべて木版画。「原色木版二百度手摺り」といわれる鮮やかで緻密な表現は必見です。

    会場ではいくつかの作品で原画、摺り見本、版画を展示。摺り見本には原画担当の麥風からの彫師、摺師への細かな指示のあとを見ることが出来ます。


    《イサギ》(『大日本魚類画集』より)摺り見本 個人蔵

    『大日本魚類画集』の版画が一堂に会するフロアを歩くと、まるで水族館の水槽の小窓を覗いているような気分に。麥風の魚への情熱、愛情を感じることができる爽やかな展覧会。東京ステーションギャラリーは東京駅直結です。新幹線に乗る前など、気軽に立ち寄って涼を得てみてはいかがでしょうか。
    [ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2013年7月26日 ]


     
    会場
    会期
    2013年7月27日(土)~9月23日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※金曜日は20:00まで
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日休館 ただし9月16日(月祝)、9月23日(月祝)を除く、9月17日(火)
    住所
    東京都千代田区丸ノ内1-9-1東京駅丸ノ内北口
    電話 03-3212-2485
    公式サイト http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
    料金
    大人 900円/高大生 700円/小中生 400円
    ※20名以上の団体は100円引
    ※障害者手帳等を持参の方は100円引、その介添者1名は無料
    展覧会詳細 「大野麥風展  「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち」 詳細情報
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