原美術館(東京・品川区)と、ハラ ミュージアム アーク(群馬・渋川市)の2館で開催される、加藤泉の個展。ひとりのアーティストの個展が、両館で同時に開催されるのは初めてです。
原美術館と加藤の接点は、メルセデス・ベンツ アート・スコープ展から。本展はもともと原美術館だけでの開催を予定していましたが、ペロタンギャラリーの協力もあって大幅に拡大。加藤のキャリアの中でも最大規模の展覧会となりました。
ハラ ミュージアム アークでの展覧会は、7月13日に開幕しました。会場は3つの展示室と、特別展示室「觀海庵」で、作品点数も当初予定の約100点から増えて、145点です。
まず、高さが13メートルあるメインの展示室、ギャラリーAから。代表的な大型の木彫作品を中心に、見逃してしまうような小さな作品まで、大小さまざまな彫刻が並びます。
作品は多くが人のかたち。原始美術を思わせる力強さと、呪術的な不気味さ、そしてユーモアが同居しています。素材も木彫をはじめ、ソフトビニール、布、石とさまざま。作品を縫うように歩いてお楽しみください。
「あまり作品を言葉で説明する事はしない」という加藤ですが、本展では壁面にメッセージも掲げています。
展覧会のタイトルは「加藤泉 ― LIKE A ROLLING SNOWBALL」。アーティストとしての自分のスタンスを、すべてをひっくるめて回転し、最後は溶けて土に帰る雪玉に例えています。
ギャラリーBとCは、平面の作品。壁面を埋め尽くすように、2段掛け・3段掛けで作品が並びます。
特別展示室「觀海庵」でも「加藤泉と古美術の名品たち」と題して、作品が展示されています。
ここでは館蔵品から加藤が選んだ古美術と、加藤の作品を並べて紹介。照度を落とした空間との相性も良く、明るい展示室で鑑賞するのとは別の魅力が見えてきます。
原美術館での展示は8月10日から。こちらは新作の絵画や彫刻、約30点が展示される予定です。ハラ ミュージアム アークに入館すると、原美術館の展覧会が100円引きになる相互割引券も配布されます。
ハラ ミュージアム アークについてもご紹介しましょう。立地は伊香保温泉の近く、建築は磯崎新です。屋外にはアンディ ウォーホル、ジャン=ミシェル オトニエルらの常設作品が点在しています。
訪問するなら「開架式収蔵庫(現代美術)の特別公開」にあわせる事を、強くおすすめします。学芸員の案内で収蔵庫に入れる企画ですが、現代美術好きなら身悶えしそうな作品に囲まれる、至福のひとときを過ごせます。毎週日曜日の14:30から、予約制です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月11日 ]