2024年の干支・辰にちなみ、「龍」をモチーフにした絵画や工芸品を紹介する展覧会が、静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)にて年明けから開催されます。
想像上の動物として古代中国で誕生した「龍」は、天に昇り、雨を降らせるなど特別な力をもつ、強さや権力の象徴とされてきました。西洋の悪さをする「ドラゴン」と異なり、吉祥の霊獣として美術品に多く取り上げられています。
静嘉堂@丸の内「ハッピー龍イヤー! 〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜」会場
龍の形体は、前漢時代(BC3-AD1世紀)に図様が定型化されますが、インドが起源のコブラのような蛇神・ナーガが中国に伝わるなど、長い時間をかけて変化を遂げながら定着されました。
多彩な“龍”の中から、ここではいくつかの作品を紹介します。
《褐釉絞胎龍耳瓶》唐時代(8世紀)
貿易が盛んになる唐時代(618-907)以降になると、具象化された龍門が陶磁器や染織品などが生まれます。会場には、明(1368-1644)~新(1644-1912)の時代に生まれた、恵みの雨を呼ぶ「雲龍」や皇帝と皇后の象徴「龍凰」、龍を中心に長寿や幸福が山海の訪れるとされる「寿山福海」文などが陳列されています。
静嘉堂@丸の内「ハッピー龍イヤー! 〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜」会場
展覧会では、これまで見る機会のなかった作品も並んでいます。清時代につくられた、堆朱で表現された龍と波涛を表現した作品も初公開です。
《龍濤堆朱盒》一対 清時代(18-19世紀)
日本に龍が伝わったのは縄文中期~弥生時代(BC10-AD3世紀)ですが、奈良時代(710-794)に入るとより本格的なイメージが定着していきます。
最も広い展示室であるGallery3では、「東の雅邦」「西の松年」とされ、第4回内国勧業博覧会に出品された橋本雅邦と鈴木松年の屛風が並んでいます。
(左から)鈴木松年《群仙図屛風》 明治28年(1895) / 橋本雅邦《龍虎図屏風》 明治28年(1895)
橋本雅邦の《龍虎図屏風》は、近代絵画で初めて重要文化財に指定されたもののひとつです。右隻には激しい雷鳴のなかで飛来する龍の親子を、左隻には龍に向かって吠える2頭の虎が描かれています。博覧会での受賞は逃しましたが、豊かな色彩と空間表現で描かれた「龍虎図」は、現在では高く評価されています。
橋本雅邦《龍虎図屏風》 明治28年(1895)
長崎の妓楼で男女が蒸気船の走る海を描いたのは、三代歌川豊国と二代歌川広重。「源氏絵」として人気を博したこの1枚には、長い煙管をつっかえ棒にしている遊女が、這い上がる龍の打掛を纏っている様子がえがかれています。
(手前)三代目歌川豊国(国貞)・歌川広重画《長崎 円やま》江戸時代・文久元年(1861)
龍が銘や図柄として茶の湯の道具に入り込んだ作品もあります。最終章では「雲龍釜」と呼ばれる筒形の釜や茶入れの盆や仕覆にも龍が施された茶道具が並んでいます。
《龍濤堆朱盒》一対 清時代(18-19世紀)
会場入口のホワイエには、龍が描かれた清朝・乾隆銘の大盤や、超大型の壺などの工芸品に彩られ、まるで新年を祝う装いとなって出迎えてくれます。
展示ギャラリー・ホワイエ
景徳鎮官窯 《青花黄釉雲龍文盤》「大清乾隆年製」銘 清・乾隆年間(1736~95)
今回の展覧会は、「辰年生まれ」の方や姓名に「龍・竜・辰・タツ・リュウ」がついている方は、同伴者も含め入館料を200円割引という嬉しい企画もあります。
また、ショップでは新春福袋セットも販売。大人気の「曜変天目ぬいぐるみ」が入っている数量限定「松」の福袋もおすすめです。
新春福袋セット
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年12月25日 ]