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    レポート
    ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか
    国立新美術館 | 東京都
    ルーヴル全8部門から、傑作が集結
    人が何かを描くとき、最も身近なモチーフのひとつが人の顔=肖像。肖像芸術は、美術という概念が生まれる前から、人々が行ってきた表現活動です。ルーヴル美術館から肖像の傑作が集結。古代から19世紀までの肖像芸術を通し、その役割と特質に迫る展覧会が国立新美術館で始まりました。
    (手前)フランチェスコ・マリア・スキアッフィーノ《リシュリュー公爵ルイ・フランソワ・アルマン・デュ・プレシ》1748年
    《葬礼モザイクの3つの断片》エデッサ(現トルコ、ウルファ)周辺で出土 2世紀末-3世紀
    (左から)ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房《マラーの死》1794年頃 / ミシェル・ブルダン2世《フランスのマルタ騎士団副総長アマドール・ド・ラ・ポルト》1647年
    (左から)《神官としてのアウグストゥス帝の胸像》イタリアで制作 前1世紀末-後1世紀初頭 / 《胴鎧をまとったカラカラ帝の胸像》イタリア、ティヴォリで1769年(?)に発見 212-217年(頭部)
    (左から)アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾンの工房《戴冠式の正装のナポレオン1世の肖像》 / アントワーヌ=ジャン・グロ《アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)》1796年
    クロード・ラメ《戴冠式の正装のナポレオン1世》1813年
    アントワーヌ=ジャン・グロ《アングレーム公妃マリー=テレーズ=シャルロット・ド・フランス》1816年(1817年のサロンに出品)
    (左から)エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン《エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像》1796年 / オーギュスタン・パジュー《エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン》1783年
    (左から)ジャン=マルク・ナティエ《抒情詩のミューズ、エラトに扮したフランソワ・ジュヌヴィエーヴ・ド・ヴァランブラ・ド・ソンブルヴァルの肖像》1746年 / 《女性と子どもの肖像》フィレンツェ 1600年頃
    「ルーヴル美術館」の名を冠した展覧会はしばしば開催されますが、今回は肖像がテーマ。対象が極めて広範囲な事が今回はポイントで、ルーヴルの全8部門(古代オリエント美術、古代エジプト美術、古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術、イスラム美術、絵画、彫刻、美術工芸品、素描・版画)から作品が横断的に選ばれて出展されるのは、珍しい試みです。

    肖像の役割のひとつが「人の存在を記憶する」。亡くなった人を記憶に残すため、肖像をともなう墓をつくるのは、広い地域で行われました。

    ダヴィッドとその工房による《マラーの死》は、暗殺されたフランス革命の指導者を、殉教者のように描いた作品。政治的なプロパガンダとしての意図もあり、本作を含めて多くのレプリカが描かれています。


    プロローグ「マスク―肖像の起源」、第1章「記憶のための肖像」

    肖像芸術と聞いてイメージしやすいのが、権力としての肖像画。写真が無かった時代、権力者は肖像で自らの姿を民に示し、その権勢をアピールしました。

    権力者である事を示すために、肖像には決まった表現があります。例えば、紀元前3000年紀末頃の古代メソポタミアの王は、縁がある被り物を被るのがきまりです。

    展覧会の見どころが、ナポレオンの肖像が揃ったコーナー。27歳の肖像画、皇帝に即位した際の彫像、さらに51歳で亡くなった時のデスマスクまで、民衆の支持を集めた英雄は、さまざまな姿で表現されています。


    第2章「権力の顔」

    ルネサンス以降のヨーロッパでは、有力な市民が勃興。それまでは王侯貴族や聖職者のものだった肖像も、より広範囲に、より下の階層に広がっていきます。

    対象の拡がりによって、表現方法も変化。例えば肖像の衣服は、それまでは権力者である事を示すための約束でしたが、市民階級になると、その人の人柄や個性を示すための要素に変化します。

    展覧会のメインビジュアルのひとつであるヴェロネーゼ《女性の肖像》、通称《美しきナーニ》も、優雅なドレスや宝飾品がモデルの個性を引き立てています。ただ、この人が誰なのか、実は分かっていません。

    しめくくりは、アルチンボルド。多様な産物を寄せ集めた肖像画は、君主の広大な帝国を寓意的に示しています。


    第3章「コードとモード」、エピローグ「アルチンボルド―肖像の遊びと変容」

    国立新美術館での展示は9月3日までと長めですが、一般的に展覧会は会期末のほうが混雑します。お早目にどうぞ。大阪市立美術館に巡回します(9/22~1/14)。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年5月29日 ]

    はじめてのルーヴルはじめてのルーヴル

    中野 京子(著)

    集英社
    ¥ 950

    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    国立新美術館 企画展示室1E
    会期
    2018年5月30日(水)~9月3日(月)
    会期終了
    開館時間
    <企画展>
    10:00~18:00
    ※当面の間、夜間開館は行いません。
    ※入場は閉館の30分前まで
    <公募展>
    10:00~18:00
    ※美術団体によって、異なる場合があります。
    ※入場は閉館の30分前まで
    休館日
    毎週火曜日(ただし8/14は開館)
    住所
    東京都港区六本木7-22-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.ntv.co.jp/louvre2018/
    料金
    一般 1,600(1,400)円 / 大学生 1,200(1,000)円 / 高校生 800(600)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は前売券および20名以上の団体料金
    ※障がい者手帳をお持ちの方および介助者1名は無料
    ※7月14日(土)~29日(日)は高校生無料観覧日(要証明)
    ※前売券は各プレイガイドにて2018年5月29日(火)まで販売
    展覧会詳細 ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか 詳細情報
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