明治維新から今年で150年。近代建築のスタートは欧米より出遅れましたが、現在では世界を舞台に活躍する日本人建築家は珍しくありません。
展覧会では、日本の建築を読み解く特質として、9つのキーワードを定義。日本の建築家たちが意識しなくとも持っている「伝統的建築の遺伝子」を探っていきます。
まず『可能性としての木造』。国土の70%が森林の日本において、木を使う文化は持続可能かつ合理的です。建築にも古くから木が活かされています。
続いて『超越する美学』。繊細さと大胆さをあわせもつ、日本の美意識。その志向は建築にも受け継がれ、高い精神性を感じさせる作品は、世界から注目を集めています。
『安らかなる屋根』では、日本建築の特性である屋根に着目。伝統的な屋根の形状が、近現代の建築家にも様々な影響を与えています。
1.『可能性としての木造』、2.『超越する美学』、3.『安らかなる屋根』『建築としての工芸』では、部分の集積としての建築について。匠の技や意匠から継承されてきた工芸性は、現在の建築の姿にも現れています。
この先に、日本最古の茶室建築である国宝《待庵》(京都・妙喜庵)が原寸スケールで再現されています。現物は入れませんが、ここでは中に入っての鑑賞も可能。「わび」の思想を空間にした、極めて重要な建物です。
『連なる空間』では、固定化されずに開かれた空間の理想像について。1/3スケールで再現された丹下健三の《自邸》のほか、モダニズムの名作家具に座る事ができるブックラウンジも用意されました。
ライゾマティクス・アーキテクチャーによる映像インスタレーションも、ここで展示。名建築をレーザーファイバーで再現するとともに、映像も用いた体験型の作品です。
『開かれた折衷』は、世界的な視野の中での自国の建築について。明治期に大工棟梁が手掛けた擬洋風建築や、伊東忠太の模型などが並びます。
4.『建築としての工芸』、5.『連なる空間』、6.『開かれた折衷』日本における公共の姿を示したのが『集まって生きる形』。新しいコミュニティの形成は、現代の建築でも大きな課題といえます。
『発見された日本』は、国外の眼で見た日本の姿について。フランク・ロイド・ライトやアントニン・レーモンドは、大いなる興味を持って日本を見つめました。
最後は『共生する自然』。自然を畏怖し、敬い、信仰してきた日本人。自然観が建築に与えてきた影響について、厳島神社や投入堂、そして現在の作品が展示されています。
7.『集まって生きる形』、8.『発見された日本』、9.『共生する自然』縄文時代の住居から未来の計画案まで100プロジェクト、展示総数は400点超というボリュームたっぷりの展覧会です。
展示デザインもユニークで、展示室壁面が上部・中部・下部と3つのレイヤーとして構成されていて、下に行くにしたがって詳細情報に。鑑賞者は自分の興味にあわせて見ていく事ができます。茶室《待庵》など5カ所で作品の撮影も可能です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月24日 ]■建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの に関するツイート